私立明星学園。都市の一等地に健在する栄えある歴史を持つらしいマンモス校。明星大学付属高校、中学校が敷地内に建ち、少し離れたところの敷地には小学校と、教育機関では前代未聞のありえない広さを誇っている。お国公認の、国最大の教育機関である明星学園はその誇りを堂々とした佇まいで誇示し、その下を朝の喧騒に賑わせていた。
明星学園の敷地に建てられた高校に何故だか在籍している私は、登校時間にごった返す人の群れをぼーっと見下ろしていた。今時の学校にしては珍しい、閉鎖されていない屋上のフェンスに手をかけてなんとなく人ゴミを目で追う。
うだるような蒸し暑い夏が終わり、過ごしやすい気候が続いて皆嬉しいのだろう。夏に見下ろしていた時よりも活発的になった生徒達が元気に登校している。一際動きが激しい人間がいたので意識をそちらに向けると、友人とふざけて追いかけっこをする男子高校生が人の合間を縫って迷惑をかけていた。
進行方向にいた中学生らしき背の低い男の子にぶつかり、男の子諸共盛大にスッ転ぶ。
「あーあ……いたそー」
さきに復帰した男子高校生が男の子にしきりに謝り助け起こしていた。成り行きを最後まで見ずに空を仰ぐ。降水確率0%、と呟いて、飽きた私は屋上に設置された木造のベンチに座った。秋を思わせる肌寒い風が私の短い髪を弄び、押されるように横になる。
今日もいつもと変わらないのだろう。眼前にかざした手で太陽の光を遮り、私は人を知りすぎた哲学者のように「暇すぎて死にそうだ」と嘆いてみた。
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