私は男の人に手を引かれて、お城の廊下を歩いています。
男の人の手は大きくてごつごつとしていました。少しひんやりとした手は、なんだか怖くなる冷たさで、私は男の人の手を温めるように、ぎゅっとにぎります。
二人でのろのろと歩いていると、先にある曲がり角からじゅんかい中の兵士さんが出てきました。
兵士さんは重そうな服(よろい、という服らしいです)をがしゃがしゃと鳴らしながら、私達の横を通り過ぎて行きます。
これで、何回目でしょうか。
兵士さん達は、怪しい人や、部屋から私が出ないようにじゅんかいしているのに、廊下を歩く私達に気付かずに行ってしまいます。
男の人を見上げました。
男の人は私が見ていることに気付いて、私に笑顔を向けてくれました。
いつもなら廊下に一歩出ただけで怒られるのに、今日はなんで誰にも怒られないのかふしぎに思って、男の人に聞いてみました。
「どうして兵士さんたちは怒らないのですか?」
男の人は小さく笑って答えました。
――俺がいるからだ
その答えに私は、なんだか分かった気になって一つ頷きました。
「そうなんですか」
この人だったらなんでもできる、と変な自信があった私はもう一つ頷きました。
男の人はなんでもできます。私の手では届かないとびらのとってだって、回せてしまいます。
私は手を引かれて廊下を歩きました。
そして私が来たかった部屋の扉の前まで来ると、足を止めてとってを回してくれました。
私はそれに怒ります。
「ノックをしてません!」
男の人は笑って、少し開いたとびらに数回ノックをしました。
私はとびらを開く前にしてほしかったんです。
「もう、おそいです!」
私が怒っても、男の人は笑うだけでした。
はんせいをしていない男の人にむくれていると、部屋の中からおかあさまの心配そうな声が聞こえてきて、私は慌てて男の人の手を引いて部屋の中に入りました。