2021/06/01

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 おかあさーん、おとうさーん。
 幼子の鳴き声がする。幻聴だ。それは知っている声だ。私の声。
 小さな頃わけも分からず路地裏で泣いていた私の声。
 私の本当の父と母のことを覚えていない。路地裏で誰を思って呼んでいたのかが分からない。
 霞越しに見る夜空は不明慮で汚い。
 石造りの地面に転がり、血を流し冷えていく身体と共に時間をかけて昔の記憶が再生される。
 おとうさーん、おかあさーん。

 口から滑り落ちる音はしわがれていて弱々しい。
 母さん、父さん。会いたい。もう一度会いたい。
 内から湧き出るものに突き動かされて身体を動かそうにもこの身体はもうだめだった。
 次、上手くやろう。この街のやつらを全部殺してやろう。


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