2021/01/13

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愛とはなんであろうか。
とんと分からぬ領分に頭をこねくり回して考えようが答えは見つからず、それは思考ではなく物体としてあるものではないかと天啓を得て裂いてみればやはり見つからず。
分からぬものであれば書を紐解き愛を知るものに問いかける。

『愛とはなんぞや』

答えはつまらぬものばかりであった。今までの知識を上塗りするような目覚ましい知見は得ることができず、それは知識や物体ではなく心の在り様であることを再認識させた。
愛を持つ心。それが無ければ知ることはできず、感覚を得ることができず、振舞うこともできぬ。
それが物体であれば心の臓を引き摺り出しぽっかりと開いた胸に詰めることができように、それは魂の在り様と相違ないものであった。
ならばその魂をがらんどうに詰めれば感覚だけでも理解できるのではないか。身体を裂き引き摺り出し、その者の在り様を食したとしてもそれは得ることができなかった。
真似事をすれば得られるのであろうかと虚飾を施し振舞えば、やはりその領分は埋まることは無かった。
ならば、ならばと試すも全てが上滑りをしているらしく到達することは叶わなかった。

ならば、ならば、ならば――、得られる可能性があるのだとすれば、それが発生するものを用意すれば良いのではないか。
些細な日常を愛する、人を愛する、人のために無償の愛を捧げる、その在り様を『それ』は見聞きしていたのだから、ならば用意するのは――、

ぽかりと阿呆の如く大口を開けた釜にくべるのは自身の身体。釜の中、ぐつぐつと煮えたぎる湯は自身の血。湯を沸かす炎は自身の存在。釜の中身を掻き混ぜる手は、自身の腕。掻き混ぜる意思は自身のもの。

どこに愛があるのだろう。
どれだけ探しても見つからず、捨ててしまったもののように思えた。
落とした場所を巡るも見つからず、見つけたのは骨だ。それを見て理解する。
それを見た少年の姿を見て理解する。戸惑うように向けられた目が、こちらをじっと伺う目が問いかける。
そうして自身の考えが間違っていたことに気付いた。

――どうやら、火にくべるものを間違えていたようだ。

何も言わずただ微笑む。
手を伸ばし他者を救う者の眩しさをよく知るこの目は、鮮やかに煌めく炎となるのだろう。
少年の目は、何も答えない者から離れて骨へと移る。その骨を少年は――。

赤く燃える日が落ち、辺りに暗闇が満ちていく。
空気が冷えて涼やかな風が通り過ぎる。
かさこそとひそやかに喋る草々の声だけが聴こえ、裏に隠れた怨嗟の声に蓋をする。

何を見ても、がらんどうの風穴が埋まることは無かった。


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