ゆらりと揺れる船の一室、目を覚ますとそこはいつもの天井とベッドの感触。ただひとつ違うといえば横には確かな温もりがあるということ。盗み見たエースの寝顔はとても綺麗でスヤスヤと眠る彼の隣で私はひとりでに顔が熱くなってしまった。恥ずかしいとかそんなんじゃなくて、どうしようもなくてただ切なくなったから。だって今日彼はまたこの船からいなくなる。それは親父の命令であって彼が二番隊の隊長だから仕方ないことぐらいわかっていたのに、それでも自然と涙が出た。

「……おい?」

上半身を起こしたエースが私の頬に触れる。なんで起きてんのとか憎まれ口を叩きたいのに一度涙が流れたらそれは止まることを知らずに溢れ出た。あぁ、我慢してたのに。ぎゅっとエースに抱き締められてもう泣くことしか出来なかった。


「本当、は、行ってほしくなんかないのにっ…!」


嗚咽や涙とかぐしゃぐしゃな気持ちを言葉にして吐き出す。こんなことエースを困らせるだけだとわかっていても今の私に己を止められる術はなくて。決してエースの強さを甘く見てるのではないけど、頭には死の文字がちらつく。そんな自分が悔しかった。

もうどれくらい時間が経ったのだろうかいつの間にか繋がれた手に安心したのか涙は自然と止まっていた。


「ああ、泣き止んだな。もう大丈夫か?」

「うん…ごめんエース寝てたのに」

「あほか。なんで今そんな心配するんだよ……泣きたいときは泣けばいいじゃねーか」


いつものバカやってるときのじゃらけた雰囲気じゃなくて、真剣な目でだけど明るく笑いながらくしゃっと頭を撫でてくれるエースの優しさにまた泣きそうになりながら今この一瞬が少しでも長く続けばいいのにと弱音が出そうになって強く奥歯を噛み締めた。
私は弱くて、白ひげ海賊団の一員ではあるけれど私なんかが一人でグランドラインに出たところで生きていける訳がないんだ。


「なぁ、……一緒には連れてけねぇが。俺はずっとお前のこと忘れねーからよ……その、あー!あれだ。お前も俺のこと想って待っててくれよ」

ガシガシと頭をかきながら話すエースを真剣に見つめながら、私はやっぱりこの人が好きで好きでたまらなくなった。そうだよね。私にはそれぐらいしか出来ないならせめてエースを生きて待ち続けなければ。不安な気持ちを消し去るようにエースに抱きつくと逞しい腕に包まれて気持ちが軽くなった気がした。


sleepless night

眠れない夜は貴方を思い出してしまう。だからどうか少しでいいから貴方の心を私の中に残していってください。

sleepless night




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