「伊佐敷先輩!体操服貸して下さい」
2年のくせに堂々と3年の教室に入ってくるところ本当に図太い神経してると思う。
「あ?!なんで毎回俺なんだよ?女に借りろ!」
懐かれてる自覚はある。
むしろノリで何度か告白もされてる。
「えぇ?だって純さんの体操服ちょうど良いサイズなんですもん」
「あ?!」
人が気にしてるのにズケズケこういうことを言うあたり、本気かどうか疑われる。
「ゴメンナサイ!グリグリしないで〜!でも本当に、他に先輩の知り合いいないんですぅ…」
しょんぼり視線を下げるもんだから
「し、しゃーねぇなぁ!!」
しかたなく、本当にしかたなくロッカーから体操服を出せば奪うように取られた。
「わーい!純さん優しい!大好き!」
「うっせぇ!抱きつくな!離れろ!!」
「えへへ〜純さんの匂い〜」
体操服に顔を埋め、頬ずりするみょうじは、だらしねぇ顔。
好きってこんな感じなんか??
「あ?今日はまだ使ってねぇから汗臭くねぇだろ?」
「純さんの匂いですよ!ありがとうございます!終わったら返しに来ますね〜!」
「今日は5限体育なんだから、昼休みに返しに来いよ」
「え?洗って返そうと思ったのに…スミマセン。しかたないから、私のぐちょぐちょ汗まみれの体操服着させてあげますね」
「ざけんなッ!」
俺が怒ってんのに、へへっと軽く笑って、手を振り走って戻って行った。
よくわかんねぇやつ!!
午後イチから体育の授業で昼休みに体操服とお礼にとスポドリを持ってきたみょうじ。
見学してたから汗かいてないとか、じゃあ体操服着なくても良かったじゃねぇか!!
袖を通してフワリと香るいつもと違う匂いに、妙に心がざわついてしまう。
「クソ!あいつくせぇ…」
昨日まで違和感なかった体操服なのに、みょうじの匂いがして落ち着かない。