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第二回御幸眼鏡争奪戦記

「御幸って試合中とかコンタクトなんでしょ?メガネやめてコンタクトにしなよ」

今日も今日とて暇な自習時間。
先生がいなくなった途端、早急に開いていたノートを閉じてスコアブックを開いた隣の席の御幸一也のほうを向く。

「またその話?お前ホントしつこいなー」

呆れてため息を吐いた御幸はこちらを見ようともしない。
だから、眼鏡越しでも綺麗な顔立ちなのは知ってるけど絶対言わない。

「御幸の写真高く売れるからさぁ」

正確には高く、というより、多くの枚数が売れる。
値段は全部一緒。
いっそ御幸だけ集めた写真集作っても売れるんじゃないだろうか?
試算しながらもう一度机へ向き合う。

「カメラとフィルムだせクソ女」

「やだぴょん。そんな口悪いと女の子に嫌われるよ」

一冊単価をこのぐらいにしてー…

「安心しろお前にしか言わねぇよクソ女」

数量限定とか御幸のサイン入りとか付加価値つけてー…


「あらやだ。私ってば特別?」


ぼんやりと商売を考えながら、適当に返事をしていたら、御幸から返って来なくなった。
くだらない事言ったかな?
直前の会話を曖昧ながらも思い出しながら何か問題あったか、なんて視線だけ御幸のほうを見る。

え…?
どうしたの?
こっち見て驚いたように目を見開いているもんだから、こっちが驚くわ。

「なに?」

「……いや、お前ってポジティブだなと思って」

すぐにフンと鼻で笑い嘲る表情に切り替わった。
なんだ、いつも通りだわ。

「それ褒めてる?」

「貶してる」

「ダヨネークソメガネー」

「ホント可愛くねー」

「あんたに可愛いと思われなくても、純さんには思われてるから大丈夫。それで満足」

「…純さんにも思われてねーよ」

この間からなんか突っかかる物言いだなこの男。
一発殴っておこうか?

「なに?なんなの?この間から!なにが気に食わなくてそんな突っかかってくるわけ?」

「お前が絡んでくるんだろ」

は?
絡まれたら迷惑だったって言いたいの?
(お互いに)友達少ないから仲良くしてやろうとしてあげてるのに、大きなお世話でしたか!そうでしたか!

わかってるけど……友達になれたと、思ってたのに…。

なんでか鼻の奥がツンとした。


「そりゃ…っそうだけど……もういい。アホらし。もう絡まないから。友達やめる。」


そう言い放って、この遣る瀬無い気持ちを訴えに倉持のとこへ行こうと立ち上がれば、思い切り突き飛ばされて椅子へ座らせられる。
なんなのよマジで!
机で肘打った痛い!
どういうつもりかじっくり話聞こうじゃないかと視線をあげて睨めば、ズイっと差し出される拳。


「…やる」


「は?」

「やる!」

なんであんたが怒ってんの!
私の机に叩きつけるように置かれた飴。
イチゴ柄の包み紙はこの場に似つかわしくないほど、可愛らしい。

「…あ、りがと?」

これはつまりどういうこと?
包み紙を開いて、少し砕けたイチゴの飴を口に入れた。



「今日の俺のパンツの柄とおんなじだから」



けけ、と意地悪く笑った御幸を見るとチラリとズボンをずらして、包み紙と同じ柄のイチゴを覗かす。

「ッゲホゲホ!!ちょっと変なもの見せんな!!」

「イヤン、エッチィ」

「お前が見せたんだろうが!!」

御幸が軽快に笑った。

もう…ホントに…
なんで素直にごめんって言えないかなー。
困ったやつだ。

「そのイチゴパンツどこで買ったの?」

「倉持のお母さんが送ってきたんだけど、大きかったから俺とゾノにくれた」

「え…じゃあ前園くんとおソ…」

「言うな」



[ 第二回御幸眼鏡争奪戦記 ]

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