- ナノ -
01
麻生×意識低い系女子
友人として「アキ」ちゃんという架空の人物がでてきます



私は基本“面倒くさがり”だ。
十七歳という多感なお年頃にも関わらず、化粧も髪型も周りのみんなのように気にするなんてできない。
朝からお化粧して、丁寧に髪を整えてくるくる巻いたり編み込んだり縛り上げたり…
顔洗って適当に髪を梳いただけで学校に行ける私には、到底考えられない。
朝そんな時間あるなら、寝れば良くない?
のんびりお散歩すれば良くない?

聞けばみんなは
「好きな人に可愛いと思ってもらいたい」
とか
「男ウケって大事でしょ?」
とか
「失恋したから女磨き頑張ってるの!」
とか。
みんな“恋”に踊らされ過ぎじゃない?
そのくせ私のそばに来て

「お前の近くにいると変な気をつかわなくて良いから楽だわ」

とか、散々踊らされてるくせに都合良すぎない?
あ、でもこの言葉はまあまあ仲の良いクラスメイト、麻生尊の暴言。

「なんだと?」

「あはは、言えてる〜。なまえのそばにいるとそのままの自分でいれるもんね〜」

同じく仲の良い(クラスの可愛い代表)アキちゃん、それは私をディスってるよね?

「そんなに疲れるならみんなやめればいいじゃん。可愛くなる努力なんて必要?みんながやるからやらなきゃいけなくなるだけで、みんなでやめちゃえば怖くないよ?」

そう言うと、麻生とアキちゃんは呆れた視線を私へ向けた。

「お前ホントわかってねぇな」

「うんうん。
みんなでやめたら、今度はみんなでスッピンを競い合うんだよ〜?女ってそういう生き物〜」

それには一理ある。
女の子は可愛いの一番になりたがる。
その結果が化粧や髪型、スカートの短さ鞄を装飾するストラップの奇抜さなど至る所での個性の爆発。

「化粧もしない、髪も遊ばない、可愛さの欠片もない、お前は言わば希少種!」

「ワーイウレシー」

「なまえって頑張れば可愛くなると思うけどね〜」

頑張ればってなに?
頑張れば東大に入れるとか、頑張れば宇宙飛行士になれるとか、そういう次元のオハナシ?
だいたいその“頑張る”をしたくないから、この現状なんだということをよくよく理解してもらいたい。

「人生頑張らなきゃいけないことたくさんあるよ?限りある高校生活をそんな“可愛い”を作るための努力するより、もっと楽に生きれないの?」

「いいか?女の子が“可愛い”と、男はそれを見るだけで幸せになれるんだぞ?それに女の子自身も“可愛い”と言われることで、嬉しくなるしきらめく楽しさに溢れるんだぞ?!」

熱弁してますけど、麻生女になったことでもあるの?

「あーわかる〜!男子に“可愛い”って言われると、女子に言わるのとはやっぱり違うよ〜」

「じゃあ、アキちゃんは男子に可愛いって言われたいから頑張ってるの?」

「それもあるけど〜、自分のためかな〜。化粧とか髪とか、上手にできたらテンション上がるし〜色んなこと頑張れるよ〜」

間延びした喋り方のアキちゃんの爪をよく見るとうっすらピンクに色づいている。
そんなわかるかわからないかの努力にさえ意味があるのか。


「まあお前みたいななのがいるから、アキの可愛さが引き立つんだけどな」


「は?その言葉は聞き捨てならないけど?」

「あ?」

「要するに私はアキちゃんの引き立て役ですか?」

「お前変なところでスイッチ入るのかよ…」

自分でもおかしいとは思っているけど、それは何か気に食わなかった。
アキちゃんが可愛いのは、アキちゃんの努力の賜物であって私が引き立てているからではない。

「あれ〜?なまえヤキモチ〜?」

クスクスと笑うアキちゃん可愛いなおい。
けど、麻生には、私はアキちゃんを引き立てるモブに見えているのかと思うと、ふと否定してしまったのは事実。
なんだこれ?

「違います。アキちゃんの可愛さはアキちゃんのであって、断じて私が引き立ててるわけじゃなくて…」

「じゃあさ〜、なまえ、今度一緒にお買い物行こ〜よ〜。私が可愛くしてあげるからさ〜」

「なんでそうなるの?!」

「良いじゃん、なまえいっつも遊んでくれないからアキ寂し〜」

こういうことサラリと言えちゃうからアキちゃん可愛いんだよね。
でもお買い物〜とかいう時間があるなら勉強しなきゃだし、寝ていたいのが本音。

「おうおう!行って来い!可愛くなったか俺が判定してやるよ」

「…なんで麻生基準で判定してもらわなきゃいけないわけ?」

「あはは〜、麻生はなんだかんだ女の子の好みに口うるさいよね〜。鏡見てから言えっつ〜の〜」

「う、うるせぇ!!」

アキちゃんに対し少し顔を赤らめた麻生を見て、なんか、モヤモヤする…。
…私も麻生にあんな顔させてみたい。


「わかった。今週の日曜日!アキちゃん!宜しくお願いします!」

「あ、今週の日曜はダメ〜合コンなの〜」

「おい!!」

「明日にしよ〜明日午後休だしぃ〜」

明日は家でゆっくり漫画でも読み返そうかと思っていたのに…。
でもしかたない。
一度やると決めたからには、やってやろうじゃないか!!

こうして私の“可愛い”化計画は始まった。






「ヘアケアは〜このオイルがしっとりするし良い匂いだから良いよ〜」

「化粧水と乳液は何を使ってる〜?」

「今は〜日焼止めとファンデのオールインワンが〜」

「マスカラはこれがおススメ〜」

「あ、リップはこの前買ったけど私に色味があわなかったのあるからあげるね〜」

ほぼアキちゃんオンリーの会話。
私は、ハイ、ワカリマシタ、ガンバリマス、オンリーの返事。
アキちゃんの喋っている言葉の意味が一つも理解できないけれど、ポイポイ籠に放り込まれたものを、お会計に差し出した。

「あ…来月の漫画代が…」

「可愛いは?」

「大事です…漫画より…」

言わされてます。
今日の合言葉です。
そのままアキちゃんは私の家へやって来て、ム〇ンプリズムパワーメイクア○ップ講座をして下さり、母の作る夕飯まで食べていってくれた。

「ねぇ〜なまえはさ〜、麻生のこと好きなの〜?」

「ぶっ…ちょっと、アキちゃん突然ナニ言ってるの?」

飲んでいた食後のお茶を少し吹いたではないか。
好き?
ナニソレ?
美味しいの?
随分前に前述しましたように私は色恋沙汰に興味などまったくございませんよ。

「だって麻生の言葉でやる気だしたし〜」

「…それは、その…ちがうよ」

「私と並べて私が可愛いって麻生に言われて悔しかった?」

「チガウヨ」

「これが前の席の山本に言われるんだったらど〜う〜?」

「ナントモオモッテナイヨ」

「女の子は素直なほうが可愛いぞ〜」

素直ですよ私?
ただ、そんなに二人が言う“可愛い”がすごいのか気になっただけだよ。
別に麻生がどうこうなんて気にしてない。

じゃ、お化粧の練習頑張ろう〜!そうアキちゃんはニヤニヤしながら話を切り替え懇切丁寧に化粧の仕方について説明を始めた。


「本当に好きじゃない〜?」

「好きじゃない!」




AofD 恋色メイク [ 01 ]