- ナノ -
04
「それで?」

「ん?」

「その後!そっからどうなったの?」

お昼休み、友達に昨日の伊佐敷くんとの出来事を報告すれは、話の終わりに続きを催促される。
続きって言っても…それ以降のことがあるわけではなく。

部活遅れるよ?
ヤベ!
じゃあまた明日
おう!

終わり。
それ以上の話なんてそれしかない。
朝も朝練が長引いたようで、少し遅く来た伊佐敷くんとは話す時間なんてなかった。
だから、本当にそれ以上は何も話してない。


「付き合おうとか!俺も好きだったとか!!「ないの?」」

思いもよらない所で、思いもよらない声が重なって友人と二人で顔を見合わせることになる。

「ねぇ、本当にそれ以上ないの?」

そう迫るのは、桜色の髪の従兄弟。
兄の方。

「りょ、すけ…今の、話、どこから…?!」

「やだな。最初からいたじゃん?」

最初からはいませんでした。
それで?
と話に加わる姿勢のようで、隣の伊佐敷くんの椅子に腰掛けて続きを促される。

「いや、だから、それで終わり」

「意を決して告白したのに流されたの?フるのも面倒だったのかな?」

「亮介…言葉を、オブラートに…」

ぐさりと刺さる言葉に、机に突っ伏すことしかできない。

「でも、これってフラれたわけでもないんじゃない?嫌なら嫌って伊佐敷くんなら言いそうだと思うけど?」

「そ!それだよ!!そうだよ!!きっと…そうであってぇぇぇ!」

「フってまた泣かれても面倒だしスルーしたのかも。なまえはすぐ泣くから」

亮介の言葉はよく切れるナイフでできている。
フラれたのか…実はそうだったのか…
面倒だった?
そりゃそうか…自他共にモテるのわかってるし隣の席の女とかなんか面倒だもんね。

「あ、じゃああたし教室帰るわ!また話聞かせてね!」

友達は慌ただしくお弁当をまとめ席を立った。
机に突っ伏したまま手を振る。
もうお昼休み終わるんだ…。


「ねぇ、そんなに好き?純のこと」


亮介はまだいるようで、話しかけてくる。

「好きだよ。春からずっと片思いだよ。なんなら亮介の試合観に行った時から気になってたよ」

「それっていつ?」

「一年の春…」

「てか、試合観に来てたの?」

「うん。伊佐敷くん見たかったから。この前の試合も、一番後ろからキャッチャー?…にバビュンッて投げたボールとかかっこよすぎたし、試合の流れとかわかんないけど、多分大事な場面でみんながなかなか打てれない球を打っててかっこよすぎたし…」

ガタリと椅子をずらした音は、亮介の方から聞こえた。

「語るねぇ」

「うん、伊佐敷くんについてなら!青道のスピッツとか呼ばれてるの可愛すぎくない?スピッツて白くてフワフワの可愛い犬だよ?!それをあの伊佐敷くんに…あー可愛い!あと実は筆箱にクマさんの…」


「誰がスピッツだコラ」


「ヒィっ!!?」

一瞬で凍りついた背筋。
慌てて席を立ち上がった。
先ほどまで亮介がいたはずの方向を振り向けば、こちらを向いて座ってる伊佐敷。
少し顔が赤い。
こんな恥ずかしいこと聞かされたら、たまったもんじゃないよな。

「なまえ、顔面蒼白〜」

あははと声をあげて笑ってる従兄弟を殴りたい。
持ち上げた手はあの桜色に落ちることなく、ひらりとかわされ予鈴の音とともに自席へ戻って行った。

何がしたかったわけ?
あ、いじめたかっただけか。
いつも通りだわ。
現実を見たくなくてどんどん逃避していく思考。


「おい」


どんな顔を彼に向けたら良いのかもわからない。
申し訳程度に彼の方を向く。
チラリと見やれば伊佐敷くんは少し恥ずかしそうに斜め上に視線を向けた。

「…名前…んで…いか?」

「へ?」

彼にしては珍しくぽそりと呟いたものだから聞き取れなかった。
聞き返したものだから、舌打ちされてしまう。
だから!と少しイラつき気味に発せられた声。

「名前!!俺もなまえって呼ぶから!!わかったか?!コラ!!!」

「……」

「悪ぃのかよ?!!」

「……」

放心状態の私に、「勝手に呼ぶからな!」と怒り任せに言われ椅子に座った。
鳴り響く本鈴と先生が扉を開けた音でようやく授業が始まることと、また机にはお弁当箱しか置かれていない状況に絶望する。

「ったく…なまえはしょうがねぇなぁ」

ねぇ、すっごく顔が熱いんだけど…
どうしたら良いんですか?
席を寄せてくれる彼との心の距離の取り方教えてください。



AofD 伊佐敷くんと付き合うまで [ 04 ]