モニターへ映る彼の姿は鮮烈だった。私の目指すべき場所のような気もしたし、まるで絶対に敵いはしない神のような圧倒的な存在を感じた。
「ばくごう、かつき……」
初めて口にしたフルネーム。彼の姿を見るだけで視覚から体の中へ星屑を取り込んでいるみたいに弾けて角が当たる。例えるなら、これは深い恋に落ちてしまった時のように私を震撼させていた。
体育祭で一位となったのに、磔にされ吠えている。この雄英高校においてヒーローらしからぬ雰囲気を纏った男。爆豪勝己。何度も心の中でその名を繰り返した。
私はこの日、爆豪くんに恋以上の感情を抱いた。
「視線が鬱陶しいんだよ」
例えこんな暴言を吐かれようとも、気にはならなかった。私のような出来損ないが彼と同じA組に居られて幸せだ。しかも授業でペアを組めるなんて神様仏様相澤先生様ありがとう!
「何の用なのかさっさと言えつっとんだ」
「要件……手短に言うね。私ヴィランになりたいの」
「ハァ!?」
「それでね、爆豪くんも一緒にどうかなって思って」
「…………そこ座れ」
「はい!」
疑いもせず大人しく座った私を彼はなんの躊躇もなくお得意の爆破で吹っ飛ばしてきたが、私の想いは挫けない。だって怪我しないように力加減はばっちりされている。けれど、女子に対して容赦のない攻撃。彼は天性のヴィランだ。
「何言っとんだボケ女」
「結構本気です」
私の家庭は代々スパイ系ヴィランとして活動している。ただその活躍の場は日本ではなく海外で、拠点を日本へ置いているだけ。だからこの雄英高校の人たちは知らなくても無理はない。何しろ世界的に見ても表立った家柄でもない。
そして、私の家族は代々この雄英高校を卒業している。この学び舎でヒーローのなんたるかを学び、心の中にある自分の熱をひた隠しにしながら三年間を過ごすことで、立派なスパイになれるのだ。
私ももちろんそのためにこの学校に入学した。
「でもね、私、出来損ないで……両親から期待とかされてなくて。だから見返したくて頑張ってるの!」
「一回落ち着けボケ女。てめぇのンな事情は知らねぇよ。でもヴィランつーなら排除するまでだ。――てめぇはヴィランなんだな?」
そうか。やっぱりダメなのか。彼はこの学校へヒーローになりたくて入学している。
「うん、そうだよ」
当然のことだ。でも、彼のそれが当然なように、私にもこれが当然なのだからどうしようもできない。小さな頃から私はヴィランになる道以外存在しなかったし、自分の思考にそれ以外の余地がない。
私は爆豪勝己に本日二度目の爆破を食らった。
爆豪くんとヴィランになりたい夢主のお話。
ちょっぴりビターな感じかもしれません。わかりません。
爆豪くんがなかなか名前を呼びません。
これも大好きな友人のお誕生日に書いた爆豪くん夢です。
コピー本で作ったので、本文の表示が本仕様です。
なんでも許せる方のみどうぞ〜。
MHA Melting into you [ 00 ]