ミルフィ〜〜ユ




「どうしたの、神楽ちゃん」
「……やばいアル。やばいアルやばいアルやばいアルやばいアルやばいアルやばいアルやばいアルやば…」
「ああああ!はいはい、分かったから!なんかそれ以上言うと色々大変なことになりそうだからやめて。私の耳がおかしくなりそうだからやめて」

こくん、と頷いた神楽ちゃん。ぐるぐるのメガネの下の青い瞳は少しだけ濡れていた。
やばうアルと繰り返してたから相当やばいんだろう。
メンタル的なことなのか肉体的なことなのか……。肉体的?沖田くんとあーんなことやそーんなことをォォ!?

「凛はいいアル。仲良くて、普通だし、素直だし、面食いだし、男好きだし、うるさいし、キモイし、変態だし」
「なんか途中から違うことになってきてるんだけど。なんで?」
「私は……思ってることと反対のことをつい言ってしまったネ。それで昨日も…サドと……」
「なに!?いいカンジなのか、悪いカンジなのか位は教えなさいよぅ!」
「悪いカンジだって察知しろヨ。この変態面食い高杉中毒が」
「高杉中毒ってなんだァァァァ!いつ私があいつ中毒になったんだよ!」
「変態と面食いは否定しないアルな」

いつも元気な神楽ちゃんが、これだけ落ち込んでいる。
いつも前を向いてにっこり笑ってる神楽ちゃんが、俯いて悩んでる。
…まあ、そんな姿も可愛いんだけどね。

「これは、あくまで私の考えだから違うんだったら違うと否定してくださいね。もしかして、神楽ちゃんてさ…沖田くんのこと好きなんじゃね?」
「、ッ!?そそそ、そんなことないアル!凛だって高杉のこと好きなくせに!私のこと構ってる暇があったら高杉とイチャイチャしてくるヨロシ」
「それだよ、それ。神楽ちゃんはさ、いっつもツンツンしてるからたまにはデレてみたら?ツンデレにはデレの要素も必要なんだよ?もしかしたら両思いかもしれないんだから頑張ってみなきゃ!今は修学旅行だし、近づくいいチャンスだよ!ほら、ファイトッ」
「…そうアルか?両思いかもしれないアルか?凛はアイツの好きな奴知ってるアルか?」
「自分で沖田くんにはっきり伝えて、そんで相手の気持ちも聞いてみなよ。それが一番手っ取り早いでしょ。神楽ちゃん、面倒くさいの嫌いそうだし」
「……、分かったネ!ありがとアル!凛もたまにはいいこと言うアルな!」
「一言多いんですけどォ!?」

神楽ちゃんはいつものようににっこりと笑って、大声で「よっしゃー!」と空に向かって吐き捨てた。
今、高杉と沖田くんが何してるか知らないけど、もし神楽ちゃんが沖田くんに告白するんだったらそれはきっと成功すると思う。
二人は絶対、うまくいく。

「凛。凛も面倒くさいの嫌いデショ?だから言っとくアル。お前もさっさと思い伝えて相手の気持ちを聞きだせヨ!私はこれでもキューピットになってやるんだからな!凛とアイツの仲をぐっと近づけてみせるネ!」

このとき思った。――ああ、いい友達を持ったなって。
怪力で大食いで、でもちゃんと乙女なんだから。神楽ちゃんだって。
下手すりゃ私より乙女かもしれないしね。ちゃっかり恋なんてしちゃってさ、悩んじゃってさ。
私だって恋してるけど、悩んでないもん。乙女になりたいよ、お母さん。

「おーい、お前らなにしてんでィ」
「お前らこそなにしてたんだヨ。待ちくたびれたアル」
「そりゃこっちの台詞でさァ、なんで俺が高杉と一緒にいなきゃなんなかったんでィ」
「私だって同じアル!なんで私が凛と一緒にいなきゃならなかったアルか!?凛の相手は高杉で充分ネ!」

神楽ちゃん、もっとデレて。デレた神楽ちゃんを見たいって言うのが本音なんだからね。