[君と歩いて](1/1)
バイトの帰り道。総悟君は結構ご機嫌だった。
「ご機嫌だね、総悟君」
「別にそんな事はねェや」
総悟君がご機嫌だと私も気分がよくなる。
自然と笑みがこぼれる。
「美香こそなにニヤニヤしてんでィ」
「別にニヤニヤなんかしてないも〜ん」
二人で笑いあう私達。
バイト先から私の家に帰るには小さな公園の前を通ることになる。
「この公園…よく遊んだなぁ…」
「誰と?」
「もちろん一人で」
一人で遊ぶことがそんなに有り得ない事ではないんだろう。総悟君は驚きはしなかった。
多分、総悟君も一人で遊んでいたんだろう。
私達、似てるのかなぁ…――?
「俺もよく一人で遊んでやしたぜ」
「だよねー。でも一人で遊ぶのって結構楽しかったかも」
「俺は寂しかったぜィ?」
「じゃあ感じ方は違うのかもね」
似てると言っても育ち方もそこまで似ている訳ではない。
感じ方もそんなに似てはいなかった。
「似てるなんて思った私が馬鹿だった…」
頭を抱えて深いため息を吐く。
総悟君はそんな私を見て頭にハテナマークを浮かべていた。
「遊ぶ?」
「どっちでもいいですぜ」
「じゃあやめよう」
「なんなんでィ」
私達は歩いた。かなりの距離を。
でも二人で歩くのはそれなりに楽しかった。
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