[君に話して](1/1)
「う…っくぅ…」
誰もいない道路に私の嗚咽だけが聞こえる。
何を勘違いされたか分からない。よくわかんないよぉ…
「私…悪い事したかな…っ?」
止まらない涙を拭いながら一人静かな道路を歩く。
目指すは母さんと父さんの眠っている場所。
「母さん、父さん…私、人の気持ちが分からない子に育っちゃったよ…」
眠っている母さんや父さんに話しても分からないかもしれない。
だけど、今でも母さんと父さんは私を見守ってくれているんだから。
空から私を応援してくれているから…
「総悟君は何と勘違いしたのかな…?私が別の男の人と会ってるって思ったのかな?私が見てるのは総悟君だけなのにね…哀しいなぁ…」
一人ポツンと呟く。
墓石の前で私は涙を流しながら一人でブツブツ何かを言い続けた。
「母さんと父さんはどうやって出会ったの?どうやって恋したの?どうやって告白したの?」
今更そんな事聞いても遅いなんて分かっているのに…
なんでこんな事言ってるんだろ、私。
馬鹿みたい…
「総悟君にも話せば分かってくれるかな?怒ってるみたいだったけど…きっと分かってくれるよね…ね?父さん、母さん」
花を買ってそこに供える。
そして合掌し帰路についた。
総悟君そろそろ帰ってるかな?
私が話したら何か分かってくれるかな?
「…た、ただいまー…」
「おかえり」
恐る恐るドアを開ける。
すると奥のほうから不機嫌そうな返事が帰ってきた。
「そ、総悟君?ごめんね、でも別に本当にやましいことしてた訳じゃないし…私の話聞いてくれるかな?」
「……」
シカトですか…。まあ別にそれでも構わないけど。
シカトされても勝手に話し始める。
「あのね…私ね、母さんと父さんを結構前に亡くしてるんだ」
「え…?」
やっと私のほうを振り向いてくれた総悟君。
驚いている総悟君に向かってニコッと笑いかける。
「母さんはね、思い病気の持ち主だった。だから私を産んだ後すぐに死んじゃったの。」
「……」
「父さんは私をすごく可愛がってくれた。でも、母さんが死んだから精神的に追い詰められて自殺を図った。」
「…うん」
「それで私は父さんの両親に引き取ってもらったけどかなり嫌われててさ…結局母さんの両親に引き取られた。でもやっぱり嫌われてて…授けられたのがこの家。一人で生きていけって意味だと思う」
「…そんな事があったんですかィ?」
「うん。で、今日がその母さんと父さんの命日なんだ。だから…お参りに行ってたの…。」
総悟君は私の長い話をはじめは無言だったけど最後になるうちに真剣に聞いてくれた。
それだけで私は充分だった。
最後に…――
「今まで話さなくて本当にごめんなさい」
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