>>families 1/7 キャイキャイワイワイ……と子供の声が飛び交う大江戸プール。子ども達が笑顔で水を掛け合ったりだとか泳いだりだとかして遊んでいるプールにピィィィィ!と大きな笛の音が鳴った。 「ハーイ、休憩タ〜イム。唇紫色になってきただろ。10分間上にあがれクソガキども」 「ちょっと、言いすぎじゃない?」 声の主は銀さん。やる気のない声はいつもどおり。 私は紅と一緒にプールに遊びに来た。それだけ。総悟は仕事らしくて来れなかったから私と紅二人で来た。そこにいたのが毎度毎度の万事屋ファミリー。「なんでいるの?」と聞いても「まあ、色々あんだよ」としか答えてくれない。 「えーーーーまだ大丈夫だよ、ほっとけよ監視員!!」 「あっそう。じゃあ好きにすれば、しらねーよ俺。プールなめたらマジ洒落になんねー事になるからね。とりかえしのつかない事になるからね。どーなってもしらねーよ俺」 「フハハハハ、驚かそうたってムダだよ兄ちゃん!!オイ、鬼ごっこの続きやろーぜ!」 だるそうに言うけど、まあ一応仕事っぽいし真面目にやってるらしい。子供たちはそれも聞かずに遊びだす。紅は銀さんの言うことを結構聞く子だからちゃんと上がっていた。大江戸プールのハッピ、何故か私にまで着せられてるんだけど…これは手伝えと言う事なの? 「キャアアアアアアア!!」 「「!!」」 どこからか悲鳴が聞こえた。銀さんと私はあわてて駆けつける。 「どうした、何かあったか」 「監視員さん助けてください!!友達が……」 あれ?なんか見たことあるんだけど、この子。いっつもお団子だけど今日は二つ結びだね。うん、可愛いね。 「友達が唇が紫色になったと思ったら…みるみる広がって…全身真紫になってしまったアルぅ!!」 「!!バカヤロォォォォだから言ったんだァァァ!!」 はい、皆さんン!?分かりました!?“アルぅ”で完全に分かったよね、これあの子しかいないよね。怪力チャイナガールしかいないよねェ!? ていうか、新八くんンンン!真紫じゃねェか!これか!銀さんがどーなってもしらねーよ?って言ってたのはこれのことだったのかァァア! 「ちょ…ガクガク震えてるけどこれ大丈夫!?あれ…なんか痩せた?つっこみのしすぎか?」 「そんな事言ってる場合じゃねーだろ?かろうじてメガネにはまだ紫菌が回っていないようだな!!」 プールに入ってる子供たちはその光景を見てみんな青ざめていた。まあ、ムリもないよねこんな所見たら。 「すぐに温かい毛布!!温かいスープ!!温かい家庭及び温かいメガネを用意するんだ!!戻ってこいィィィィィ石川ァァァァ!」 「いや、石川って誰だよ!」 『ギャアアアアアアア紫菌に侵されるぅぅ!!』 プールの中の子ども達は紫菌におびえてみんな出てきた。子供は純粋だからね、あーいうの信じちゃうからね。紅は純粋じゃないから信じないんだけど。総悟に似てあいつポーカーフェイスだよ、おびえた子ども達をさらに脅かしてやがる。 「…フン、プールの恐ろしさ思い知ったか」 「いや、アンタの方が恐ろしいわ」 「何やってんだてめーら」 ゴッと私たちの頭殴ったのは、ビート板を持った長谷川さんだった。あー、なんか話が読めてきたわ。あれだろ、また長谷川さんに頼まれたんだろ?ここのプールの手伝い。 「客が溺れないよう見張っとけ言ったんだよ俺はァァァァ!!何で客恐怖に溺れさせてるワケ!!ガキどもビビッてどっかいっちまっただろーが!!」 「私は見張っとけって言われてません。ちなみにガキも一名ビビッてません。未だに人をビビらせています」 「なにしてんだァァァァ!!もうやめろ、おい!!」 長谷川さんに促され「ちぇー」と言いながら子ども達から離れる紅は総悟そっくりだった。銀さんたちも「俺ら悪くねーもん」みたいな顔して立ってやがるし、新八くんは「ペンキかわいてきちゃった…」とか言ってるしィィィ! 「長谷川さん、プールってのは死と隣り合わせなんだ。生半可な覚悟の奴は帰った方がいい。鼻に入った水の痛み、いつの間に肩についてた青っパナ、置き忘れてみんなのさらし物になった汚ねぇパンツ」 「ついでに家で水着に着替えていったらパンツ家に忘れちゃってノーパンで帰らないといけなくなったときの屈辱」 「それらプールの怖ろしさを知って初めて人は水辺で遊ぶ権利を得られるんだ」 「全身紫色になる恐怖は知らなくていいよね!」 まァ、紫色になることなんて人生で一回あるかないかくらいだからね。私はまだ未経験だし。 「ホントマジでさァ、やっと手に入れた職なんだから頼むよもっと慎重にやって!!今年は記録的な猛暑!!例年にない程客が入ってんだ!!夏の思い出を作りに来た子供達をしっかり見守り無事思い出と共に家路につかせてやる。それが俺達監視員の役目だ!!!!」 ていうか……自分の仕事なら自分で仕事しろよォオ! prev|next |