俺は知っていたんだ。アイツが治らないことも、アイツが毎日一人で泣いていることも。
俺は知っていた。
知っていたけど、目をそむけた。


名前がいない世界で俺が一人で生きていくなんて無理な話しだし、ましてや俺が名前なしで生きていけるわけがない。
それを知っていたからこそ、俺はアイツに会わせる顔がなかった。
多分、俺が「逝くな」なんて言ったら名前は死ぬことが嫌になる。
俺はそれが嫌だった。


名前が死ぬのはもちろん嫌だけど、名前が泣きながら死んでいくのなんて見たくない。
だから俺は見舞いに行くことはしなかったんだ。


『総悟、今日も来れない?やっぱり忙しいのかな?』


携帯を開けばメール一件の文字。差出人はもちろん名前。
俺はそれに適当な返事だけ返して携帯を閉じた。一分もしないうちに名前から返事が来た。


『やっぱり忙しいよね…。ごめんね、何度も何度も。暇だったからさ。ごめん。もう、聞かないね。』


『バイバイ』


目の前がグラリと揺れた。多分、名前からのメールのせいだろう。
ごめんね、なんて聞きたくない。バイバイなんてもっと聞きたくない。
なのに、どうして俺はこいつを苦しめてしまうんだろうか…。


俺は、そのとき夢中で走り出していた。
名前に謝りたくて、名前を抱きしめたくて、名前にキスしたくて…。


「名前…っ!」
「…?総悟?どうしたの?大じょ…っ」


俺は名前の姿を見た瞬間に力いっぱい名前を抱きしめた。


「い、たいよ…総悟…」
「俺ァ、名前が好きなんでさァ。好きで、好きで大好きで仕方ないんでィ…。だから…」


「死なないでくだせェ…っ」


そのとき、名前の目から一粒の涙がこぼれた。


「わた、しは…総悟と生きたいよ…生きて、総悟と大きくなりたい……今の総悟の言葉で私、頑張れるよ…!」
「俺も名前と生きてェや」


夢の続きをくれたのは、あなただけだったよ

お題:確かに恋だった




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