あの時アタシが









あの場にいなければ










総悟は









あんな目にあう事がなかったんだ









ごめん……









総悟……









先日の過激派攘夷浪士との乱闘―――

この乱闘により相当な数の命が失われ、そして傷つけられた。

そしてこの人、沖田総悟も……。

目の前にいる敵のみに夢中になり、背後から迫る敵に気付かなかったアタシを助けたところを2発の銃弾で撃ちぬかれた。

1発は腹部下部、もう1発は心臓付近を通っていた。

医師達の懸命な処置により一命は取り留めたものの、1週間経った今でも目を開いていない。


『総…悟………』


アタシはこの1週間、一睡もせずに総悟についていた。

局長や副長が代わると言ってくれたが、総悟が必死に戦ってる中自分だけ休むなんて出来なかった。

あの時アタシがあの場にいなければ…!!

そう、何度も自分を攻めた事もたくさんあった。

それでも目を開けてくれない総悟を見て、アタシは自分の無力さに涙が溢れた。


「おい、名前」

『はい』


副長が病室に一人で入って来て、アタシの隣の椅子に腰掛けた。


「お前、いつまでそうしてるつもりだ??顔色悪りぃぞ。ちゃんと食って寝ねぇと」


そう言う副長の言葉を遮って言った。


『アタシ…自分が許せないんです…総悟がこんなになってるのに、元凶のアタシが普通に生きてるなんて…。だから総悟の意識が戻るまでアタシも一緒に戦わなきゃって……。アタシ…それくらいしか出来ないから』









「……それで、総悟はホントに喜ぶのか??」


アタシは思わず副長の顔を見た。


「目を覚ました時、お前が…自分の守った奴が辛そうに自分を攻めてたら、総悟は喜ぶと思うか??総悟は……お前が元気で自分の帰りを待っててくれた方が何倍も嬉しいに決まってる」


副長はアタシと視線を合わせ "な??"と言った。

そして椅子から立ち上がるとアタシの頭の上に手を置き

「総悟がいつ帰って来てもいいように準備しとけ」


と言って病室を出た。

それからアタシは総悟の看病をしながら生活も正した。

もう誰にも心配かけないように。

そして、総悟がいつ戻ってきても笑顔で"おかえり"って言えるように。


−−−−−
−−−


それから一週間が経った。

総悟の怪我の具合もよくなり、後は意識が戻るのを待つだけだった。

いつものように脇の椅子に座り総悟の髪を撫でながら顔を見つめた。


『総悟、待ってるから。早く戻ってきてね』


するとまぶたがぴくっと反応した。


『総悟?』


今度は指が動く。


『総悟!』


その声が聞こえたのか、総悟がゆっくりと目を開けた。


「名前…」


久しぶりに聞いた総悟の声に涙が溢れる。


『よかった…総悟ぉ…』


そう言って総悟の首筋に顔を埋める。

総悟はそんなアタシの頭を優しく撫でてくれた。


「心配かけてすいません。でも、もう大丈夫でさァ」

『うん!』


アタシ達はお互いの存在を確かめるように何度もキスを交わした。

総悟、戻って来てくれてありがとう。

アタシが居る場所は総悟の帰る場所。

総悟の居る場所はアタシの帰る場所。










Return place=帰る場所
-END-


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