「一週間しか一緒にいられないなら、一週間をたっぷり使ってたっぷり楽しみまさァ」


さっきの表情、言葉とは全く逆のことを言ってるような気がしたが沖田くんがそう提案してくれたのは正直嬉しかった。沖田くんと約束してからよく笑うようになった気がする。前に比べたら、だけど。


「奏、一緒に帰りやしょう」
「そんな事していいの?女の子には興味ないんじゃ…」
「言っただろィ?一週間たっぷり楽しむって」
「そっか」


気づいたら、私はいつの間にか笑っている。それが沖田くんと約束してから普通になった。まだ、沖田くんと約束して、何時間かしか経ってないのに。人間、やればどこまででも変われるんだな、と思った。
Z組は思ったよりいいところで沖田くんは教室に入るなり「俺の彼女でさァ!!」と大声で断言したけれど、私は気分が悪くならなかった。「大丈夫アルか!?」と声をかけてくれる女の子、「よろしくな」と声をかけてくれる男の子。今迄、私に声をかけてくれる人なんていなかったから少しむずがゆかったけど、いつの間にか笑みがこぼれていた。


「どこ行きやす?」
「沖田くんが行きたいところでいいよ」
「その沖田くんってのなしでさァ。俺だけ名前で呼んでんの馬鹿みたいだろィ?」
「で、でも…」
「総悟。総悟って」
「そ…」


沖田くんはドSだったんだっけ。Z組の人が言ってた。気をつけろよって。たしかに、私のことをからかってるところを見るとドSっぽい。


「そう、ご……くん!」
「チッ、くん付けですかィ?」
「だって今はこれくらいしか…!!」
「顔。顔、赤いですぜ」
「ふぇっ!?」


いつの間にか、私の顔は赤くなっていたらしい。今迄こんな風に赤面したことなんて一度たりともなかったのに。沖田くんに会ってから、私はどこまで変わるんだろう。この人は、私をどこまで変えてくれるんだろう…?


「奏、」
「なに?」
「奏は笑わないほうがいいですぜ」
「え…!?」


ズキン…!と胸を貫くような痛みが身体を襲った。こんなに痛いのははじめてだ。外側が痛いのなら慣れている。でも、内側がここまでやられることははじめてだ。


「ご、ごめん…笑うと変だったよね……。見苦しいもの見せてごめんなさい…もう笑わないから…ッ!!」


痛かった。自分でそんなことを言うたびにズキンズキンと痛みが増す。鼻の頭がツン…と痛くなる。ああ、涙が流れそうになるのはどれくらいぶりだろう。涙はどうやったら止められるんだっけ。


「違いまさァ!その…か、可愛すぎるんでィ!!」
「へぇっ…?」
「奏の笑顔は可愛すぎるから…」
「そう…、だったの?」


カァァ!!と顔を真っ赤にして顔を見せないように横を向く沖田くん。沖田くんが可愛らしくて仕方がなかった。


「総悟くんが言うなら、いくらでも笑うよ」
「あれ?今……」
「え…!?」
「総悟くんって言いやした?」
「い…ってたの、かも…」


いつの間にか、涙なんかどこかへいってしまった。変わりに心からの笑顔がこぼれた。それと同時に総悟くんと一週間で別れなければならないという悲しみが私を襲った。


きみの優しさが苦しい
ごめんなさい、総悟くん






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