私のタイムリミットはあと……一週間。



短い間だけでもいい。私のしてみたかったことをしてみたい。私がどれだけしたいと願っても、私がどれだけ努力しても、全然出来なかったこと。一度だけでいい。一度だけでいいから。優越感、味わいたい。だから、神様お願いです。
私に、運命をください。




「おっと、すいやせん」
「こちらこそ。私の不注意だから」


新学期、といってもどうせクラスは変わらないのだろう。と私は思っていた。生徒がざわざわと騒ぐ昇降口前には珍しく掲示板があった。そこに貼りだされていたのはクラス表。一応、目を通しておくだけでも…そう思った。
上から順番に名前をたどっていった。私は前からB組だったからまたB組だろう、と思いB組の表を見てみた。…ない。ない。ないのだ、B組の表に私の名前が。
急いで、他のクラスの表を見てみると、一つだけ汚い紙があった。それはZ組と呼ばれるクラスの表。私はそこで自分の名前を見つけた。奏、と書かれた紙はボロボロの薄汚い紙だった。
こんなことになるだろうな、とは思っていた。元々学校はサボりがちだった。これくらいの罰を受けるのは当然かな。なんて自分自身に言い聞かせてもやはり少しくらいは悲しいものだ。


「ちっ、またZ組か…」


私の後ろにはさっき私とぶつかってしまった、栗色の髪の毛の男子生徒がいた。たしか、その男子生徒は人気があってファンクラブがあったような気がする。名前は忘れたけど。
その男子生徒は掲示板からそそくさと離れてしまうので、私は男子生徒の制服の裾を少し掴んだ。男子生徒は私に気づいたのか、足をとめた。


「ねえ、アナタもZ組の人?」
「ああ、そうですぜ。もしかして、アンタも?」
「うん。教室知らないから、教えてくれない?」
「別にいいぜィ」
「ありがとう」


男子生徒の制服の裾を放してとぼとぼと後ろを小さくついていく。所詮、サボり魔の私はこの学校のことをよく知らない。教室だってどこにあるのか、まだあまり覚えられてないのだから。


「あ、そうだ。アンタ、名前なに?」
「私…?奏」
「Z組に入る新しい奴か。まあ、よろしくお願いしまさァ。俺ァ、沖田総悟」
「沖田くん…」


沖田くんなら…いいかもしれない。


「ねえ、沖田くん」
「なんですかィ?」
「お願いがあるんだけど…」
「なんでさァ」
「私と付き合って」


頬も熱くならないし、顔も赤くならない。ただ、私のお願いを聞いて欲しかっただけなんだから。「ああ、またか」沖田くんはそんな顔をして私のことを見つめていた。そりゃあ、モテるんだから何度も何度も告白されてりゃそういう風にもなるだろう。


「悪ィけど俺ァ、女には興味なっ…」
「一週間でいいの!一週間で…だから、お願いします…」
「…本当に一週間でいいんですかィ?」


こくりと頷くと沖田くんはぽりぽりと頭をかきながらはぁとため息を吐いた。やっぱりダメか…そう私が思ったとき。


「別にいいですぜ。ただ、一週間だけでさァ」
「…!あ……と……」
「あ?」
「ありがとう」


久々に笑った気がする。私が笑えば沖田くんは顔を少し赤らめて、微笑んでくれた。



この恋を止められない
だけど、ただの契約だ






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