柚子と一緒に学校に登校すると、もちろん遅刻。
俺が寝坊したせいだ……と肩を落とす俺に柚子は励ますことさえせずにとげのある言葉を刺す。


「やっぱり遅刻…アンタがさっさと起きないからでしょ?もう…あたしがいないと何にも出来ないんだから…」


とげはあっても俺には最後の「あたしがいないと何も出来ないんだから」ってところがすっごい嬉しかった。
だって本当にその通りだし。
俺は柚子がいないと何にも出来ねェ。

柚子が死んだらとか本当、考えたくもない。
柚子が転校したら、俺だって着いていくし。


「仕方ねェだろィ。昨日、忙しかったんだから。」
「どうせゲームでしょ?」
「勉強…とゲーム……」
「ほらやっぱり。」


柚子には何でも見透かされてしまう。
でも、それが嫌だとは思わない。ちょっと嬉しい。
出来れば俺の気持ちにも気づいてくれたらいいのに……


「今度、あたしも一緒にゲームやりたい…かも…っ」
「全然いいですぜ」
「やったっ」


顔を真っ赤にして俺に頼む柚子を見て断れる訳がない。
俺がいいと言えばさっきの顔とは全然別でキラキラと顔や瞳を輝かせて、にっこりと笑う。


「今度、総悟んち行くから!」


学校に着いてからというもの、俺と柚子は違うクラス…な訳はなく、授業時間もあっという間に過ぎていった。
柚子と俺の席は随分遠い。それに比べて高杉と柚子の席は近い。

アイツは最大の恋敵でさァ!


「総悟、あたし用事あるから先に帰っていいよ。」
「俺も用事あるんでさァ、終わったら下駄箱で待っててくだせェ。俺も行くから」
「ん、分かった」


柚子の用事とやらがかなり気になる。
もちろん柚子だって俺だってモテるのには変わりない。今日だって今から告白されに行くんだから。
柚子ももしかしたら告白されるのかも……。

そう考えると不安が募る。

柚子と教室の前で別れて柚子より先に下駄箱で待ってようと思ったから急いで校舎裏へ向かう。
そこには一人の女の子の姿。と、もう一人遠くに見えたのは男子生徒。

その男子生徒も誰かを待っている様子…まさか柚子!?


「あ、あの…私ずっとずっと沖田くんのことが好きで…っ!よかったらお付き合いしていただけませんか…?」
「ごめんなせェ。俺、好きな人がいるんでさァ。ずっと前から好きな奴が。」
「…やっぱり。友達もそう言われてフラれたって言ってましたから。よかったです、そう言ってもらえて。恋愛成就頑張ってくださいね!それじゃ…っ」


あんなこと言ってるけど、今頃あの子はどこかで泣いているんだろう。
俺は柚子しか見れないんだ。柚子しかいないんだ。

そういえばあの男子生徒…っ!
男子生徒の姿を探してみれば案の定、柚子の姿もあった。

少しずつ近づいて、二人の会話を聞く。


「柚子さん!好きです、付き合ってください!」
「ごめんなさい。あたし…」

「好きな人がいるの」


衝撃的な事実に俺も驚きを隠せなかった。
好きな人がいるなんて…そんなの全然知らなかった…。


「ずっと前から好きな人だから、諦めたくないの。ごめんね…告白してくれてありがと。」
「僕!諦めませんから!」
「…諦めてほしいんだけどね……」


男子生徒が立ち去ってから柚子の近くにいって、話を聞こうとする。


「柚子−っ」
「わっ…!なんだ、総悟が…脅かさないでよ…。こんなとこで何してんの?」
「ずっと好きな人って誰ですかィ?」
「は…話聞いてたのっ!?」
「もちろん」


みるみる顔が赤く染まっていく柚子。
俺はずっと好きだったってところにちょっとだけ自惚れていた。


「で、誰ですかィ?」
「い、言わない!絶対言わないっ!」
「吐かせてやりまさァ」
「い、いつか分かるんだから…そのときまで我慢しろ!」


この恋、きみ色
君が他の誰かを好きだとしても君以外俺にはありえない。


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