残念ながら、俺は彼女にべた惚れなんだ。

小さい頃から一緒の柚子。可愛くて、でもどこか素直じゃなくて。
そんな彼女に俺はずっと惚れている。小さい頃からずっと。
柚子のことなら誰にだって負けない自信がある。

でも、柚子が俺のことを好きじゃなかったら…
その自信だけが俺にはない。


「ほら、総悟!さっさと起きろ!」


ボーっとする頭に響くのは柚子の声。
朝からうるさいと思うけど、でも俺のことを起こしにきてくれてるんだと思うと嬉しくてにやけてしまう。


「うるせェな…もぉちょい寝かせてくだせェ……」


でも、俺だって恥ずかしがることくらい出来る。
だから、柚子が起こしに来てくれてどんなに嬉しかったとしても、いきなり抱きついたりはしない。
ちょっとずつ俺の気持ちが柚子に分かってもらえるようにすればいい。


「うっさいって…今もう八時だよ!?このままだと遅刻だよ!あたしが親切に起こしに来てやったんだから起きろ!起きなかったらもう二度と起こしに来ないからね!?」
「起きまさァ」


素直じゃないのはどうやら柚子だけじゃなくて俺もそうみたいだ。
いくら嬉しくても起きないと言ってしまう。でも、柚子が起こしに来てくれない朝なんか朝じゃねェ。
そんな朝むかえたくもねェや。


「うん、よろしい。さっさと行くよ!早く用意してよね!」
「分かってまさァ!」


柚子に言われて急いで制服に着替える。朝食は抜き。
多分、柚子がどっかでパンでも買ってきてくれてるからそれ食べればいいや。


「お待たせ」
「遅い!早くって言ったでしょ!?」
「すいやせんでしたー」
「ったくぅ……」


やっぱりどっからどう見たって柚子は可愛い。
俺以外の奴にとられないか…実は不安で不安で仕方ないんだ。
銀八とか土方とか…高杉とか……。

柚子は誰にでも同じように接するから本当の気持ちが分からない。
素直じゃない分、俺にはまったく分からないんだ。柚子の気持ちが。
みんなにもツンツンしてるからそれはそれで俺は安心だけど……

いつデレを見せるか分かんないし。


「朝ごはん食べた?」
「食べてやせん」
「しょうがないなぁ…はい、これ。朝総悟んち行く途中に買ってきたの。」


やっぱり柚子は俺に朝ごはんとしてパンを買ってきてくれていた。


「俺のために?」
「ち、ちがっ…別にアンタのためじゃないし!こ、コンビニ寄ったからたまたま買っただけよ、たまたま!」


顔を真っ赤にしてお決まりの台詞を言う柚子はあまりにも可愛かった。


残念ながらべた惚れ
俺の初恋は果たして成就するのだろうか。


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