雨はずっと降り続いている。
お昼休みから授業が終わった今でも。


妙ちゃんと神楽ちゃんはずっとしらばっくれている。
あたしが何度聞いても何も答えてくれないし、何も教えてくれない。
それは土方君も同じだった。
土方君も絶対グルだ!


「あ…やば、傘…忘れちった…」


鞄の中をガサゴソと捜しても傘が見つからない。
妙ちゃんと神楽ちゃんは方向が違うからいつも一緒に帰らないし、他に友達はいないから貸してもらえる人がいない。


「どうしよ…。このまま濡れて帰るしかないのか…?」


濡れて帰ろうと考え昇降口の屋根がないところへ足を踏み出した。
雨が降って濡れることを覚悟していたあたし。
だけど、あたしの上には雨どころか水滴一つも落ちてこなかった。


頭の上でポツポツと音がする。
ゆっくり上を向いて見ると傘があった。
黒い傘が。


「濡れて帰る気ですかィ?」

「おおおお…沖田君!?」

「そんなに驚くことかよ…?俺じゃ不満なんですかィ?」

「そんな事誰も言ってないでしょ!?ぬ、濡れて帰るから…いいよ、傘。」

「風邪ひくぜィ」

「風邪引きにくいの、昔ッから」

「アンタに風邪ひかれちゃ俺が困るんでさァ。だから傘、一緒に入れ」

「なんで…命令形なの…。馬鹿ぁ…」

「うるせェや」


傘にあたしと沖田君の二人が入る。
普通に見れば相合傘だ。
あたしが半分。沖田君が半分。


雨はあたしの鞄にかかるけどあたし自身にかかることはなかった。
沖田君があたしに雨がかからないようにしてくれたから。


あたし達はそのまま校門を出て一緒に帰ることにした。
…というより、そうなってしまった。

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