「メアド、教えて」
「はい?」
「だから、メアド。教えてくだせェ」
「え…」
嬉しかった。 今までにないほどの喜びを感じた。 あたしは急いでポケットから携帯を取り出して沖田君の方へ差し出す。
ポチポチとボタンを操作する沖田君。 あたしの携帯を沖田君の携帯の赤外線通信が始まって終わったとき、あたしの携帯に沖田君のメアドが入ったことになるんだ。
「はい、終わりやした。これで夏休みもあやに連絡取れやすぜ」
「あ、そっか……。うん、そうだね…。」
「やっぱあやは笑ってるのが一番いい」
沖田君とメアドを交換できたのが嬉しすぎて自然と笑っていたらしい。 あたしはそんなに沖田君が好きなのか。 自分でも分からないくらい、いつの間にか制御できないくらい好きになっていたんだ。
こんなに人を好きになったのはじめてだよ。
「じゃあ、また。メールしまさァ」
「うん、あたしもメールするね」
あたしは沖田君のメアドが自分の携帯のアドレス帳に入ったことを確認して妙ちゃんと神楽ちゃんの待っている席へ歩いて行った。 あたしのアドレス帳の一番最初の人は…沖田君。 あ行の人が入るのははじめてだったから。 それもあたしはすごく嬉しかった。一番上が沖田君だったのが。
「あや、どうしたネ」
「沖田君とメアド交換したんだよ」
「ひゅーっ!!」
「ちょっと、神楽ちゃん」
「あ、ごめんヨ」
「ハハッ」
今年の夏休みも楽しくなりそう。 あたしはさっきまで嫌だと思っていた夏休みが一気に楽しみになった。
交換
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