「アンタ、ちょっと可愛いからって調子乗りすぎよ!!勝手に人様の彼氏盗んどいてごめんの一つも言えない訳!?」

「別に盗んだ覚えはないから。アンタの彼氏があたしに勝手についてきたんでしょ?彼女が勝手なら彼氏も勝手な奴なのね」

「このクソ女!」

「お前らそこで何してる!」

「チッ…私がアンタみたいな容姿だったら世界中の男が私のものなんだから!」

「勝手に自分のものにしとけっつーの」


またか。またこんなんか。
あたしは特に顔が可愛いわけでもないし、人を魅了する性格を持っているわけでもない。
でも、容姿を羨ましがる奴は沢山いる。
だけどあたしはそんな事気にしない。


だってあたしはあたしでその子はその子。
その子が生まれて持っていた顔や性格にケチをつけるつもりはない。
性格なんて周りの環境でどうにでも変化するものなんだから。
そんな事で人生が変わることでもないし。
人間の欲望とは本当に怖い。


そんな事言ったら男子だって同じじゃないか。
例えば…


「お前、まだいたのかよ。」

「悪い?アンタこそ何のために戻ってきたわけ?」

「忘れもん」

「あっそ。」


こいつなんかは、ファンクラブが存在するほどのイケメン。
…だと言われてるけどあたしにはどこがいいのかさっぱりだ。
そんで、こいつとつるんでる沖田って奴も結構なイケメン。
そいつもファンクラブが存在する。


だけど、男子はイケメンとかイケメンじゃないとか関係ない。
ヘドロだって怖いけど仲良くしてる奴は…あんまいないか。
でもヘドロが土方と沖田にケチつけてる訳じゃない。


「お前もそろそろ帰れよ」

「はいはい。アンタが校門から姿消したら帰る」

「おーお前らまだ帰ってなかったのか」


あたしと土方しかいなかった教室に銀八先生が入って来た。
あたしは銀八先生から目を逸らし土方は銀八先生と見つめ合ってる。
何なのこの二人…。


窓の外を見るともう日は落ちていて結構暗かった。
どうせ銀八先生なら土方にああ言うだろうとあたしの中で銀八先生の言葉が思い浮かんでいた。


「もう外暗いから白波が一人で帰るんじゃあぶねーだろ。最近はそういう事件流行ってるしな。だからお前、白波を送っててやれ。じゃ、先生帰るから気をつけろよー」


バンッと思いっきりドアを閉めてった銀八先生。
絶対、ワザとドアを閉めた。
それに土方に言うと思っていた言葉もドンピシャだった。


「はァ!?ふざけんな、テメー!!」

「別に先生の言うこと聞かなくてもいいんじゃない?あたしだってアンタみたいのに送られるなんて吐き気がするっつーの」

「はァ!?お前もふざけんなよ!?」

「やめて、近づかないで。マヨネーズがつく」

「俺、今マヨネーズ持ってないから!」

「マヨネーズ持ってなくてもお前がマヨネーズじゃん」

「マヨネーズ言うなァ!!マヨラーと言えェェェ!!」


あたしと土方の大声が聞こえたのかまたドアが開き銀八先生が少しだけ顔除かせてニヤリと変な笑みを浮かべながらあたし達に言った。
先生の言った事を守らなかったらお前らこれから毎日一緒に帰ってもらうからな、と。
お前らのことはなんでも知ってんだからな、と。
その言葉であたしと土方の考えが一瞬にして変わった。


仕方ない、毎日変えるよりは一日だけ一緒に帰ったほうがマシだ。
銀八コノヤロー!!

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