「ねぇねぇ聞いた?沖田君と白波さんが付き合い始めたって!」
「うん、聞いたよ〜。スゴイカップルだよね、あの二人。」
それからあたし達の噂は学校中に広まった。 誰が流したのかは知らないけど、あたし達が二人で帰ってるところを見かける人は少なくもない。 だから、そう思ったのだろう。
それはもちろん土方も例外ではなく… あたしが土方と帰ることは全くなくなった。
沖田と付き合ってるって理由もあるかもしれないけど、多分土方があたしと沖田のことを知ったからだろう。 知らなかったら未だに話しかけてきたかもしれないし…。 土方はあたしのことをなんて思っていたんだろうか。 可哀想な奴、とでも思っていたのかな?
「優梨?」
「ん?なに?」
「サドと付き合い始めたって噂がドンドン流れていくネ。止めなくていいアルか?」
「止めるも何も…事実だし。別にいいんじゃない?」
「事実アルか!?マヨラーはどうしたネ!」
「土方のこと…?ま、アイツはアイツで…色々あるみたいだしね…。」
神楽と妙ちゃんはあたしよりもあたしの気持ちのことを分かっていたみたいで。 土方のことも毎日毎日、気にしてくれていた。 心配している神楽と妙ちゃんには悪いけど、あたしは土方のことを忘れたいんだ。 嫌いになりたいんだ。
だからこうやって距離を置いて、沖田とあたしは付き合ってるんだ。 沖田には悪い事ばかりしているような気がするけど…。
「優梨ちゃんがいいならそれでいいけど…。私達はいつだって優梨の気持ちを優先させるからね。何かあったらすぐに言ってね。」
「うん、ありがとう」
妙ちゃんと神楽の優しさに涙が出そうになったことが何度あっただろうか。 本当のことを言うとあたしは沖田がまだ好きではないのかもしれない…。 沖田の優しさに、沖田の気持ちに、すがっているだけなのかもしれない。
本当はまだ、土方のことが好きなのかもしれない…。
「あたしって最低だ…」
みんなに迷惑かけて、みんなに心配かけて、沖田にすがって…あたしほど嫌な子はいないだろう。 沖田のことを好きな子がこの学校にどれくらいいるか…そんなもんあたしだって数えたことない。 数えなくたっていいくらい、人気なんだから。 それなのに、あたしは沖田のことをその子たちから奪っていった。
やっぱりあたしは最低最悪な女だ。
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