金くれよ | ナノ



「仕事…?」


あり得ない。こんな店に仕事が来ることは滅多にないからだ。ましてや二日連続で仕事なんてあり得ない。
未来は心の中でぼそぼそと呟いていた。昨日も仕事が入ってきた。猫を捕まえろ、という依頼だった。もちろん報酬はこれっぽっちもない。それでもそのこれっぽっちの報酬でも生きていくためにはなるだろうから、それを使って万事屋の連中は生きる。神楽は酢昆布をぼりぼりと食べていて。銀時はいつものソファに座ってジャンプを読みながら話をしていた。未来は風呂。新八は依頼人――沖田にお茶を出し、自分もソファに座って話を進めた。


「そうでさァ、最近ちと厄介な奴がいやしてね。そいつ、見つけんのに協力してくれやせんかィ?」
「なんでですか。なんで僕らがアンタらに手を貸さんとならんのですか!真選組の仕事でしょうが!」
「厄介なんでさァ。俺ら真選組も伊東の野郎の後始末やらで忙しいんでさァ。金はここに置いておくんで、じゃあ失礼しやしたー」


真選組はつい最近、隊内から裏切り者が出て何人もの死者を出す大きな戦いがあった。それの後始末とやらで沖田は忙しいのだろう。神楽は酢昆布をばくばくと食っているし、銀時は金を見つめていた。結構な量が入っていた。だが……


「おいおいおいおい。沖田くぅーん?これぜぇぇんぶ千円札だよね?千円札十枚入ってるよね。一万円だよね、これ」
「あれ?一万円じゃダメですかィ?金さえ払えばなんでもやってくれるっていうから金持ってきたんですけどね」
「一万円ってこれ。依頼の内容考えようよ。そんなクソ面倒くさい仕事が一万円?あり得ねーっつの。しかもてめーら真選組の手助けなんて一万円でやるかボケ。十万持ってこーい」
「嫌でさァ。あ、やべ忘れてた。これがそいつの写真でさァ。そんじゃ」


それだけ言って今度は本当に万事屋からそそくさと出て行った沖田。それを見て銀時は舌打ちをし、新八は写真を見ていた。直後、新八はそれを見た後すぐに目を見開いて小刻みに震えていた。


「ぎ…銀さん…、沖田さんの探し人ってこれ……」
「あ?んだよ、新八ぃ、めっちゃ可愛い姉ちゃんとか?」


「未来さんじゃないですか!?」


沖田の持ってきた写真には明らかに未来と思われる人物が写っていた。
そのころ、未来は風呂から上がり、着替えて髪を乾かしていた。未来は鼻歌を歌いながら風呂に入っていたから沖田が来ていることなんて知らないだろう。


「はぁー…さっぱり。お風呂に入ってるときがいっちばん楽だわー」


ごしごしと頭を拭きながらぶつぶつと独り言を言ってみんなのところへ戻るとわーきゃーうるさい叫び声が聞こえた。もう、このうるさいのにも慣れた。はぁ、とため息を吐いてソファに座ると隣には銀時が座っていた。


「ねえ、誰だったの、依頼人」
「サディスティック星の皇子様」
「誰だよ、それ」

「銀さんこれどうするんですか…、依頼ですよ。未来を真選組に差し出すんですか!?」
「嫌アル!まだ未来と遊んでないネ!もっと未来と遊びたいアルヨ」
「………、たかが一万円でアイツらに手を貸す気にはなんねーよ。それに――」



そんなやり取りがあったことも知らないで、未来はわーだ、きゃーだ言う神楽と新八のことを笑いながら見ていた。来てスグのころはもの凄くつんけんしていた未来も今は少し丸くなった気がする。その証拠に、――よく笑うようになった。


「未来!今日の当番は未来アル!ご飯は何アルか?」
「…あ、」


「やべ、」とこぼした未来。今日自分が当番なのを忘れていて、料理を作るどころか買い物にも行っていない。それを聞いた神楽が「ぬぁんだとォォぅ!?私おなか減ったヨ!すぐに買い物に行くヨロシ!」と未来に促した。外はもう日が暮れている。今から買い物に出ても帰ってくるころはもう外も暗いだろう。


「えー…、わぁーったよ。行ってくるよ」
「おい、もうすぐ日が暮れんぞ」
「だーいじょぶだって、…多分」
「しゃーねェなァ…。新八ィ、神楽ァ、ちょっとこいつ買い物行ってくるから留守番頼むわ」
「おうヨ!」


そう言って、二人は万事屋から出て行った。


「別に一人でもよかったのに」
「あぶねーだろ。いくらお前がゴリラみたいだからって一応女なんだぞ」
「おい、今ゴリラつったろ」


スクーターに乗って、大江戸スーパーまで直行する。




優しい仲間たち


「………、たかが一万円でアイツらに手を貸す気にはなんねーよ。それに、いつかアイツから話してくれるさ」


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