恋は魔法だって誰かに聞いたことがある。


「もうすぐ花火アルゥ!」

「そうだ、花火」


忘れてた。お祭りの目玉だってのに…。
「あーあ、今年も彼氏なしの花火大会か…」そうぼやくと、神楽が横から、大きな声で「名前は私より男のほうがいいアルか!」と言われた。


「違う違う。神楽とくるのも楽しいけど、むなしいじゃん?高三にもなって彼氏なしで花火大会…メイクも浴衣もかなりきめてきてるのに、隣にメンズがいないのは辛いと思うの…」

「じゃあ、名前は一緒に行きたい男でもいるアルか」

「それは……、」


いないことは、ない。
だけど、その人が女の子と一緒に花火を見るような人じゃないって知ってるから、誘えもしない。


「うわ、なにアルかお前!急に近づいてきて、気持ち悪いアル」

「うるせェチャイナ。ハァ…よかった、間に合って…」

「沖田…、なにして…」


まさか、沖田が息を切らせて、私のところに来るなんて、もしかしたら「花火一緒に見ない?」とか運命のお誘いかもしれない。多分ないけど。
妄想ばかり膨らむ。現実ではそんなことはないとわかっているけど。


「名字、花火一緒に見やせんか?」


どうして、私が今一番言ってほしい言葉がこの人にはわかるんだろう。
本当に魔法使いみたいだ。


魔法使いの彼

答えはもちろん、「いいに決まってんじゃん!」


(20110812/藍田雛)


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