短編たち | ナノ
10
ガシャン、ガシャン、
なんの音だろう、そういえば雨は止んだのだろうか。差し込む夕日に九分九厘止んだとふみ、ゆっくり意識を起こした。
夕日がまっすぐ入ってくるこの寝室が嫌いだった。綺麗なオレンジが嫌いだった。吐きそうなくらい綺麗だ。
那月くんは太陽みたい。
響は月みたい。
雨が降ってしまえばどちらも出てこない。
だから、雨が好き。
ガシャン、ガシャン
ああもううるさいな。目元はもう赤くなかった。朝から夕方まで一回も起きずに寝られるなんて俺は疲れていたのかもしれない。
一階におりて、玄関に向かうと案の定チェーンがガシャンガシャン言っていた。正確には言わされていた。
だいたい予想どおりだったけど、隙間から見えた響は予想外に焦った顔をしていたことがやけに印象的だった。
「…開けろ」
こくりと頷いて扉に近づく。
ぼーっとしていたのに上がる心拍数
とくん、とくん
がいつのまにかドキドキドキドキ、とうるさいくらいに。
なんで来てくれたの
俺が休んだこと知ってるの?
ねえ、響の目に俺は今うつってるの?
「チェーンなんて普段かけてねえだろ」
「最近はかけてるんだ」
普段ということばにつきんと胸が痛む。普段響はこの部屋に来ないじゃん、何言ってるんだろ。
響がいつもと違う、と気づいたのは部屋にあげてお茶を淹れてすぐだった。
「……響、なんかあった?、」
陰った表情から響の気持ちを読むことはできなくて、ソファに座って動かないひとを見つめた。
もしかしたら部屋を出て行くことに反対してくれるのかもしれない。
俺がいないとだめって、思ったのかもしれない。利便性から存在を求められたとしても、俺はきっと絆されてしまうし、嬉しいと思ってしまうだろう。
なんて考えもあほらしかった。
響がゆっくり口を開いたのはしばらくの沈黙の後。
「那月が知らねえ男と歩いてた」
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