短編たち | ナノ



遭遇



「あー、クソ。視界がグラグラしやがる。」


職員室に球技大会関連の書類を提出し、これでしばらく役員棟から出なくていいんだ、という達成感で思いっきり気が抜けた。

役員棟は隔離されすぎだろ。
どんだけ自意識過剰なんだよ役員共は。
なっがい廊下とかむだなセキュリティとか、学生証忘れて外に出ると事務所いかねぇと中入れねぇしクッソ不便。


久しぶりに役員棟を出て変に開放感を感じた。暇じゃないがいつもよりは肩の荷が下りてる今のうちに食堂とか行っといた方がいい気がする。

仕事の量に段々慣れてきたというのが正直の感想だ。しぬほど慣れたくなかった。クソ。


顧問のセクハラ教師にも顔色死んでるって言われたし俺どんだけ死んでんだよ。

……やっぱ食堂とか行ってる場合じゃねぇわ。寮で寝るか。

くるりと方向転換して寮への道を歩く。


これが大きな間違いだったと気づくのはあと5分してから。



ーー



寮のエレベーターで役員専用階に登り、チーン、という軽快な音と共に廊下に降り立つ。
この音きくの何週間ぶりだ?
マジで俺生徒会室で暮らしてたんだな


「っと、キーどこやったっけ」


あーやばい、脳で喋ってんのか口に出してんのか分かんなくなってきた。


「ったくあのマリモマジ潰す」


あー、まあここ役員しかいねぇしいいか…
つーかやべえほんとグラグラするし

やっとのことで鍵を開け、ガチャリと重たいドアノブをひいて、


「うわ、…っいてぇ、」


キーン、と突然ひどくなった頭痛に踞って、そのまま意識が遠のいた。いってぇ、床に体強打したすげぇ痛い。

完全に意識がなくなる直前に、どたどたとうるさい足音が聞こえた気がした。









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