次郎部屋 | ナノ





side伊賀邦仁


「風紀なんか嫌いだもーん」


負け犬の遠吠えとはこれのこと。赤ちゃんを抱き上げるようにだっこした次郎を見ながらほくそ笑んだ。


キスするかのように顔を屈めた会計を見つけたのがつい数分前。にっこり笑めば会計は顔を引きつらせた。


驚いて固まっている間に次郎をすばやく抱き上げて抱えると会計は悔しそうに顔を歪めた。


「それにしてもなんでこんなにすやすや寝てるんだろうね?次郎」


「んーー……」


泣いてる顔も引きつった顔もいいけど寝顔もなかなかじゃない、次郎。


さぁて仕事も段落つけなきゃいけないし。いい犬も拾ったことだし風紀室に戻ろうか。


「…僕のこと好き?次郎」


「んー」


なんて。会計のやってたくだらない遊びを真似れば虚しい満足感を覚えた。



ずりおちそうになっている次郎をかかえなおすようすると次郎の細い腕が首に回る。


まるで自分の意思で抱きついてくるような感覚に思わず頬をゆるめて黒髪に唇を落とした。



風紀室に戻ると西園寺の「邦仁この忙しいときにどこほっつき歩いてるんやろなぁ?」というキャンキャンとうるさい声が耳に入る。


適当にはいはいと返事をしてソファに次郎を置いて、もう一度黒髪に唇を落として顔をあげれば随分冷たい顔をした平岡と目があった。


「……そういえば伊賀先輩の情報って高く売れるんですよねー」