次郎部屋 | ナノ


(引き続き山内)

「次郎、」

「んー……」


ゆさゆさとゆすってみるが無駄らしい。不満げに唸った次郎は寝たままゆっくりと顔をこちらに向けた。


「あーー、まじか」


やばい。

やばいね。


さらりと机にちった髪の毛が朝日を浴びてきらきらしてて、不満げに突き出された唇は赤い。


色濃くはえるまつげが時々揺れて。


「勘弁しろよなぁもう」


妙に扇情的なのは勘弁してくれ。


「次郎、お前もう帰れば?」

「んーん」

「寝んなら部屋で寝ろって」

「んー」


こりゃ拉致があかない。
そっと黒髪に手を伸ばしてゆっくりかき混ぜた。

猫っ毛がふわふわと手に絡みついて、絡みつくくせになぜかさらさらしてる矛盾だらけの髪の毛。


そのままするりとほっぺたに手を伸ばせば次郎は少し身じろいだ。


「……やまうちかぁ……手ぇつめたい……」


眉をひそめる姿にちょっとムカついて、ほっぺたに伸ばした手をさらに下ろして首の後ろに回した。


「んーーー…やぁだ……」


「……」


あーもーう。ほんとに勘弁してくれないか。
薄眼を開けた次郎と目があった。
きょとんとした眠そうな目。

俺を捉えた甘い目がゆっくり垂れた。伴って弧を描く唇。



思わず自分のブレザーをばさりと次郎にかけてその上からまた乱暴に頭をかきまぜた。


「ちょ、やだぁ」

「うるさい自覚を持て馬鹿野郎」

ほんとにもうたのむから。