次郎部屋 | ナノ

3





「俺が先だぞ!」
「ちょ、和樹ちゃんしーっ!」
「お前ら二人ともうるさい」

さぁ寝ようとゴロゴロしていて少しした頃、リビングがさわがしいことに気がついた。


和くんはとっくに寝ただろうし、なんなんだろうと体を起こす。


ねむねむと目を擦っていると


「……え」


扉が開いて、なにかがなだれるように崩れて床にばたばたと倒れる。


「いったぁ!」
「痛いぞ!山内じゃま!」
「いて、お前ら、俺が一番下敷きなんだけど、くそ」

「……なにやってるの」


あちゃーっという顔をした和くんはぴょこんと体を起こしてこちらに駆け寄ってきた。


「次郎おめでとう!えへへ!」
「えへへじゃないだろ、起こしてどうすんだよ」
「おい山内てめぇ和樹に乱暴な口聞いてんじゃねぇぞ」
「原田はいちいちキレないでくれない〜?」


ぴたりと俺の腰回りに手を回し、俺を見上げてにこにこする和くんを撫でる。


バカみたいだ


ひよくんの手に溢れるのはどうみてもアロエヨーグルトで、
山内の手のうえにはいかがわしい本が数冊握られているし

和くんなんて顔にアロエヨーグルトと書いてあるし

ちほさんはプレゼントは俺!とでも言いたげにリボンをつけているし


「別に俺はお前にプレゼントってわけじゃなくて、部屋にたまたまヨーグルトがあったからまぁこれでいいかって思ってだな」
「次郎、そろそろ一人遊びも学んだほうがいいと思ったんだけど」
「次郎!アロエヨーグルトと俺の最強のコラボだぞ!嬉しいだろ!」
「次郎、俺のことどうしてもいいよぉ」


なにを寂しいなんて嘆いてたんだろう俺は


「…みんな馬鹿みたいだけど」


今年は一人だ、なんてしおらしく考えていたのが馬鹿らしい、


「ありがとう」


緩んだ頬にみんなは一瞬固まった後、同じようにゆったり笑った。


そうだ先輩にお礼のメールして、太郎の電話に出て、

いろいろしなきゃいけないんだけど

「次郎次郎!俺な!明日は次郎にケーキを焼くぞ!」
「和樹、それは俺も食っていいのか?」
「ひよりはだめ!」
「っ」

「山内その趣味の悪い本しまいなよぉ」
「そう言いながらなんでさっきからこっちみてんの」
「いや、見てないし」
「見てんだろ」
「見てないもん」

この変に幸せな気分にいまは少し浸っていてもいいかなって思うんだ。