君の笑顔の3秒前


いつもの放課後。
授業が終わって生徒達は帰ったり部活に打ち込んだり、色んな奴が居る。
そんな中窓から校門を見ると俺のクラスの奴が誰かを待ってるようだった。
いや、待っているんだろう。今更知らないぶるのは変だろ俺。

そういえば今日大串くん部活休みだったな。だからアイツも待ってんのか。
待ってる時は下を向いて表情がうまく見えないが、アイツにベッタベタに惚れてる俺はどんな表情してるかわかっちまう。
はぁ。ほんとに、俺何してんのかねェ。生徒を、しかも彼氏持ちの奴を好きになるなんてよ…。


最初は普通に教え子だった。ちょっと国語の苦手な。だからよく俺のとこに来て授業の質問や問題の解き方を聞きに来てた。そこまではよかったんだよな。そこからだよ。アイツが段々気になったの。俺のとこに来ない日があったら柄にもなくへこんだり、挨拶してきただけでテンション上がったりよ。俺は中学生か。もういい大人なのによォ。大人ってよりおっさんか。
そういやァ、前質問に来た時こんな事言われたな。


「先生どうして私の事名前で呼ばなくなったの?」

「あ?特に意味はねェよ。」

「ほんと?だって急に呼ばなくなったじゃん。……私の記憶が正しかったらなんだけど、土方くんと付き合い出した頃から呼ばなくなったよね?」

「どーだったかねェ。先生記憶力悪いから忘れちゃったよ。」

「もしその事で気使ってくれてるなら、いいからね!別に土方くん先生に名前呼ばれて怒るような人じゃないよ!」

「どーだかな。大串くんあー見えて独占欲強そうだな」

「私、先生に名前呼ばれないの、寂しいよ…」


違うんだよ。お前の事前みたいに名前で呼んだら自分を抑えられる自信がねェんだ。前は先生ってポジションで我慢出来た。だけど今はどうだ?今目の前に居るコイツの名前を呼んでアイツが返事したら俺はコイツを抱き締めない自信があるか?大串くんを忘れさせるくらいめちゃくちゃにしちまうだろ。そうしたらお前は泣くんだよな。泣いて泣いて、でも大串くんには相談しないで一人で抱えるんだよ。

お前が好きだから、嫌われたくない。
ただの先生で居たいんだ…。


「あー、懐かしい事思い出したな…」

そろそろ大串くん来るかねェ。そしたらお前は誰よりも、どんな女よりも綺麗で可愛い笑顔を大串くんに向けるんだよな。


「こんなに好きなのによ…報われねェーなァ…」

そう思って割り切っても明日アイツを見るだけで俺は1日気分良く過ごせるんだろうな。
我ながら単純で笑える。

あ、大串くん来た。




(その笑顔俺だけに向けてくれる時は来ないんだよな…)



企画サイトROUTE様に提出作品。
楽しく書かせてもらいました!


20110507




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