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「やめるって、なんで急にそんなこと。」

そんなそぶりまったくなかったし
そんなことか考えてるなんて全く思いもしなかった。

「急にっていうかね、2年になったときから思ってたの。」
「なんで?」
「だってさー…。
それこそ中学の始めは試合にも出してもらえてたし私でも通用した。けど最近はめっきり鳴ばっかりだしさ。
だから変化球でも覚えてまだ通用するってとこ監督にも見せたかったんだけど。」
「でもそんなこと分かってたことじゃん。」
「そうだね。
私さ、中学入ったときも野球やめたいって言ったことあったじゃん?
その時奏哉さ、“俺が奏架の球受けるんだからやめんなよ!”っていってくれたの覚えてる?」

たしかあのときは女じゃ甲子園行けないって事にショックうけたんだよな。

「覚えてるよ。だから今続けてるんじゃん」
「うん、そうだね。奏哉が受けてくれるから続けてた。
けどもう私じゃ試合出れないんだよ。
いくら奏哉が受けるって言っても私が試合出れないからうけられないんだよ」
「そういう問題じゃ。」
「私にとってはそうなの。
第一、私がピッチャー選んだのだって奏哉がキャッチャーだからだし。」

返す言葉が見つからないってこの状態のこと言うんだろうな。
それを分かってか 奏架が続けて話し出す。

「ごめん。話それたよね。
とにかくいくら何を言われたって私は3年に上がる前に野球やめる。
やめたあとって正直未練たらたらだと思うけど…。
けど納得いかないまま続けててもね。試合も出れないし。
ここらへんが潮時ってやつなんだよ。」

女の子が野球を続けるのって。
ごめんね、急にこんな話しにきて!

奏架はそういって部屋を出ていった。


潮時、か。






(潮時)





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