手の鳴る方へ手の鳴る方へ


ーーセプター4屯所・情報室




伏「どうなってる」

秋「吠舞羅がバラ撒いた動画関連のシーズニング、大体は完了です。情報統御のアルゴリズムがありますからね。本質をズラす情報をさらに流すことによって…今のところ、ネットでは良くできた素人の悪戯動画で終わっています」

伏「…そっちは?」

弁「犯罪歴のある人間をデータベースで紹介していますが、芳しくないですね」

伏「……緑に食いつかれないといいけどな」


伏見の端末が鳴り、画面をスライドさせて電話に出た。


伏「ーーーわかった、すぐ行く」

秋「伏見さん、どちらに?」

伏「お前は自分の仕事してろ」

秋「あ…はい」


秋山は情報室を出て行った伏見を見送ると、再びパソコンに目を向け……


秋「クフフ。
青のクランの癖に血の気が多いですねぇ」

さすが、元赤のクランズマン。
口元を歪ませてた彼の左眼は赤く染まり、六の文字が刻まれていた。









◇◇◇◇◆








「伊佐那社、貴方に聞きたいことがある」


ククリと別れて伊佐那社が生活している学生寮の一室に来ていた。出してもらった緑茶を一口飲み、話を切り出す。


「その猫はなに…?」

シ「へ?ねこ?」


伊佐那社の側にずっといたピンク色の毛並みの仔猫。一見そこら辺の猫とは何ら変わりはないけど、残念ながら…私の目はそう簡単には誤魔化されない。


「術を解いていいよ」


私がそう言うと、猫は考え込むような素振りをした。伊佐那社は、何の事だかわからないらしく、頭の上に疑問符を幾つも浮かべている。


「安心して。
私は貴女の飼い主の敵じゃない」


出来るだけ優しく言えば、猫は「わかった」と言わんばかりに小さな頭を縦に振った。
ポンッ!
そのポップな音と共に猫は、人間の姿に戻った…が。


「何で裸なの」

シ「うわああああ!!」


思わず即答した。
伊佐那社は悲鳴を上げたあと、彼女を凝視したまま固まっている。年頃の男だから、女の身体に興味がない訳がないだろうけど、


「見過ぎ」


バチンッと彼の額を叩くと我に返ったらしく、両手で顔を覆った。そんな私の行動が許せなかったのか、全裸の女が威嚇するように身構えた。


ネ「シロに何するにゃぁーー!!」

「…うるさい。服を着て」

ネ「むぅ!服は窮屈だからイヤ!!」

「…私は別にそのままでもいいけど、このままだと貴女の大切な彼は警察に捕まる。薄暗い牢屋にぶち込まれて、貴女とも一生会えなくな…」

ネ「ヤダ!!
シロはネコのシロだもん!ケイサツとかにあげない!」

「…だから貴女が服を着れば問題ないって言ってる」

ネ「いぃやぁだぁ!!」


話が通じない相手と会話するのは、普段の30倍面倒くさい。どうやら彼女の脳みそは猫並らしい。ってことで、


「殺してしまおう」

シ「だからダメって言ってんでしょーが!!」







◇◇◇◇◆






女の子に斬りかかろうとするクロネさんを抑えて、女の子にはクローゼットから予備のワイシャツを出してクロネさんに着せてもらった。背後で二人の格闘している声が聞こえたけど、僕は一度も振り向いてないからね!?

で、今女の子は甘えるように僕の腕に擦り寄っている。男としてとてもおいしい状況なんだけど、今はそんな空気じゃないし…。


「貴女のソレ、一種の認識操作能力のストレインということでいいのかしら」

ネ「ん〜むずかしいことはわかんにゃい!」

シ「…すとれいん?」

「《王》から力をもらわず、自然的に覚醒した能力者をストレインと呼んでる」

シ「へぇ。
!あ、えーと、今更だけ君の名前は?」

ネ「ワガハイはネコである!」

シ「ぇ…?ねこ?」


変わった名前だなぁ。


「本名を聞いてる」

ネ「ム。ネコはネコだもん!シロのネコだもん!」


何度聞いても、女の子は自分が “ ネコ ” だと言い張るから、僕ら遂に諦めた。本名がわからない以上、そう呼ぶしかないし。


シ「…そういえば、さっきから言ってる “ おう ” ってなんなの?」


ずっと気になっていた。
“ おう ” って 王様の事だよね…?


「話すと長くなる」


そう言うと、クロネさんは席を立った。
何処に向かうのかと思えば、キッチンの前に立ち、包丁を手に取った。


「お腹すいたから、ご飯食べてからにする」


彼女の言葉に応えるように、僕とネコの腹の虫が鳴り響いた。







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(僕の知らない世界を知る)







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