君に、いつか光を照らして

主「“はじめまして、石切丸”」



私の新しい主がそう言った。
その言葉に何処か違和感を感じたのは、気のせいではないと思いたかった。
彼女の青い水晶のような瞳は、一度も私を映してなどいない。そう、別の私を見ている。そんな感じがした。だから、彼女の近侍で初期刀の加州清光に訊いてみた。



「私が来る前に、“もう一人の私”はいたのかい?」



果たしてその問いが正しかったのか、間違いだったのかはわからない。
加州は、ゆっくりと首を縦に振った。俯いたまま、彼は顔を上げなかった。溢れた涙を見せないように両手で隠した。



加「“前の石切丸”は、主が生きるための鎖だった…でも、検非違使との戦闘で、仲間を庇ってっ……」







“壊れたんだ”











“前の”私がいた時は、満開の桜が本丸を囲むように美しく咲いていたという。
しかし今やその影もなく、蕾のまま固く閉じたままだ。それは主の心そのものを指しているようで…。



「主」



抜け殻のようにひっそりと縁側に座っている彼女に声をかける。ゆっくりこちらに視線を向けると、儚げに微笑んだ。そして、自分の隣に座るように促され、それに従う。



主「ごめんね、石切丸」

「…なにがだい?」

主「満開の桜、観せて、あげられなくて……」

「、」



光を失い青く濁った瞳は、悲しげに揺れた。彼女の言葉に私は首を横に振る。


「大丈夫だよ、いつかきっと見られる」

主「……そう、なの?」

「ああ」



きっといつか見られる。
いや、見せてみせるよ。
君と私、皆の為に。













あとがき

結局何が書きたかったのか謎です(笑)
大好きな後輩ちゃんが、レベルMaxの初期刀を失っちゃったという悲しい話を聞いてしまったからかもしれないです。





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