噴水前で、俺は絶句した。なんかポッポタイムの前が悲惨な事になっている。見渡す限りジャンクの山山山、だ。まるでくず鉄じいさんの家みたいだった。がらん、と一際大きな音がしたのでそっちに視線を移す。瓦礫の山の中から特徴的な髪型がぴょこんと姿を表した。

「クロウか」
「遊星……どーしたんだよコレ」
「あぁ、鉄蔵おじさんから貰ったんだ」
「あのジャンクデッキのかぁ?」

いや、貰ったって量が異常だろ。ツッコミたいのを抑えつつ話を聞くと、どうやらあの家からD・ホイールの改造に使えそうな鉄鋼だけ持ってきてもらったらしい。製鉄すれば、鉄鉱石から作り出す鉄より硬度は劣るが、内装に使えるだろうと言うこと、炉はおじさんの知り合いが運良く工場を持っていてそこの電気炉を使わせて貰えると言うことを実に生き生きとした表情で語った。こういうこととなるとまるで別人のように饒舌になるのは遊星の癖だ。

「それに、ほら」

いつの間にか遊星の手には怪しげなスイッチが並んだ機械が握られていた。正直嫌な予感しかしない。遊星が「罠発動!」と叫びその中のスイッチを一つ押すと、ぐわんと俺の隣から屑鉄が勢いよく競り上がってきた。十字架にドクロが刺さったデザインは良く見覚えがある。遊星のカード、『くず鉄のかかし(等身大サイズ)』だ。いつの間に仕組んだんだよ。

「あのじーさんのリアルトラップまで持ってきたのかよ!」
「これ程完成度が高いんだ、譲ってくれると言うなら貰うしかないだろう」

うっとりとかかしを見つめる遊星に俺は何も言えなくなった。まるで頬擦りまでしそうな勢いだ。どうやらえらい気に入ったらしい。

「まだボタンあるじゃねぇか、これは?」
「あっ、待てクロウ!」

俺は遊星の手から機械を奪い適当に真ん中のボタンを押してみた。遊星の焦ったような声と共に「うわっ!?」俺の足元の地面がぽっかり開く。流石の俺でも重力には逆らえない。しかも、深い。半端なく深い。

「遊星、なんだよコレ!」
「鉄造おじさんのリアルトラップをリスペクトして侵入者対策に作ってみた。落とし穴だとつまらないから『奈落の落とし穴』にしてみたんだが……どうだ?」
「侵入者対策ならせめて『粘着落とし穴』にしろよ!」
「なるほど。参考にする」

遊星が紙に何かを書き付ける。悲しきかなメカニックの性。どうやら友人を心配するより自分が作った罠の性能を確かめる方に軍配が挙がってしまったようだ。あぁそうそう、と遊星が思い出したように付け足す。

「その落とし穴、時間がたつと『硫酸のたまった落とし穴』に変わる仕様にしてるから早く上がって来た方がいいぞ」
「嘘だろ!?」
「しかし硫酸は流石に危ないからな。服だけ溶かす液体に差し換えておいた」
「変な仕掛けつくんなぁぁぁあ!!」

急いで落とし穴をはい上った俺に、遊星は「俺も半信半疑でジャックを落としてみたら、ほんとに服だけ溶けた。凄いな、現代の技術は」と言い放った。理由が理不尽極まりない。俺は嬉々として次のジャンクトラップの説明を始めた遊星の笑顔が少し眩しくて思わず目をそらした。



「うわ、服がどろどろじゃねぇか……」
俺は着替えをとりに自分の部屋に戻ることにした。







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