05 魂「……嫌、い…」 完全に目が泳いでいる。 心「目が泳いでる……。やっぱり、嘘付けねぇな」 ちょっとほっとした様子。 魂「……何でそんな顔してんだ」 心「だって……嘘が付けないのがソウルらしいし、素直でいいじゃん」 魂「いいかどうかはわからないが……俺らしい、か」 響「いいんじゃないの?嘘よりは本当のことを言った方がよっぽどね」 心「嘘が付けない素直なソウル君。恥ずかしがり屋だけどね」 わしわし頭撫でる。 魂「…うっせぇ、ハート」 響「恥ずかしがり屋もいいじゃないか」 魂「ヒビキも黙れ。お前は言うこととやってることが矛盾してんだよ」 響「でも…ソウルは単純だけど、君はあまり読めないね」 ハートにニッコリ笑う。 心「………」 じっとヒビキを見る。 心「色々事情があってね。俺、あまり本心を出さないんだ」 ふっと笑う。 響「ふーん。その事情って何なの?」 無邪気っぽい目でハートを見つめる。 心「……………」 チラッとソウルを見る。 心「家の事情だよ。それだけだ」 響「そっか、なら仕方ないや。僕は部外者なわけだし当然だよね」 特に気にした風もないヒビキ。 心「そういえば、居候がどうのこうの兄貴と話してなかった?」 ソウルの方を見る。 魂「それは……こいつが住む家を見つけないまま入学になったからな…」 苦い顔でヒビキを見る。 響「迷惑かけてごめん、よろしく」 ぺこっと軽く頭を下げる。 心「…………そう。こっちも迷惑かけるかもしんねぇから、その辺りよろしく」 一瞬だけ目に不安が滲む。 響「…押しかけたのは僕だから、そんなの気にしないで」 ハートの不安は見て見ぬふりをした。 魂「まったく、本当にはた迷惑な奴だ」 心「(家族以外の人が家に住む……。それもソウルの友達)」 琴「ハート、残り食べてくれるかな?」 気を逸らそうとわざと声をかける。 心「あ、ああ…」 響「ちょっと電話して来るね」 ポケギアを持って、いったん店から出て行く。 魂「ああ」 晶「(ハートは何かあるのかな…)」 不安げに会話を見守るクリス。 琴「大丈夫よ。あんまり考え込むのはよくないわ。いつでもいいから、辛くなったら電話しなさい」 心「ありがとう、コトネ」 ほっと胸をなで下ろす。 魂「…?」 響「ごめん、なんか親からメールきてて…そういえば電話しろって言われてたんだよね」 戻ってきたヒビキが照れくさそうに笑う。 琴「心配なのね、ご両親」 心「(本当、環境が全然違う。学校のことを心配してくれなんかしないよな、親父は)」 響「うーん…まぁ一応はね。でもうちの親は結構放任主義だよ。息子を他地方に一人で行かせるくらいだし」 琴「でもそうやって連絡をしてくるじゃない。愛されてるわね〜」 ヒビキをつつく。 響「……そうだね」 一瞬目を見開いた後、微笑む。 心「………?」 ポケギアのブザーに気づいて、外にでる。 魂「電話か?」 外にいるハートをじっと見る。 心「あ…、いや、大丈夫です。兄貴もソウルもいますから、……心配なんか、……本当、大丈夫だよ、親父」 着信を切り、その場に座り込む。 琴「なかなか戻ってこないわね」 魂「見て来る」 ハートを追って外へ出る。 魂「…どうした」 心「電話、親父からだった。心配してくれてたらしくて…それで。今までなかったから、俺…嬉しくて」 嬉し泣きをするハート。 魂「…そうか、わかった。わかったが、とりあえず涙を拭け。あいつらの方に戻れねぇぞ」 心「セーターの生地で目をこすると痛い…」 手のひらや甲で必死に涙を拭く。 魂「ハンカチ…はねぇけど、ティッシュならあるぞ」 ポケットから探し出してハートに渡す。 心「ちょうだい」 涙は拭かず鼻をかむ。 back | next |