*女体化と百合注意! *バイオレンス *ダスク×輝二(女体化)


「かわいそう」
 可哀想、可愛そう。目の前の女はそう言って笑う。
 眼前で茨がゆらゆらと揺れた。鮮やかな緑に、これまた鮮やかな赤が流れ、冷たい石の床に落ちる。全部、輝二の血だ。その血は今も絶えることなく、確かな痛みとともに輝二の体から滴っている。
 今時茨の鞭なんて悪趣味な……そう思わずにはいられない。
「吐いてしまえば楽になれるのに」
 黒と赤の装飾が施された指を輝二の顎にあて女、ダスクは俯いていた顔をぐい、とあげさせた。
「炎を受け継いだ少年は、どこ?」
 幾度目かの、感情の籠らない淡々とした問いかけ。
 少し動かされるだけで、頭上で腕を縛る茨の棘が更に肉を抉り、すでに傷だらけの体は悲鳴を上げる。苦痛の呻きを噛み殺し、ただダスクを睨んだ。
「っ、何度も、言わせる、……な。居場所は知、らないし、たとえ知って、いたとしても、…お前らなんか、に教えはしない」
 拓也を売るくらいだったら死んだ方がマシだと、輝二の瞳は折れる気配は微塵も見せることはない。
「ふぅん……」
 小さな嘆息。顎を解放され、輝二の視線は再び床に戻る。
「身を挺して愛する者を守る……そういう女の子は嫌いじゃないわ」
 瞬間、冷たい液体が輝二の頭にに降り注ぐ。冷たいはずのそれは、髪を滴り、ぼろぼろになった服を濡らし、茨に付けられた無数の傷から体内に入り込み、カッ! と燃え上がるように熱くなった。それが赤いワインだと気がついたのは、全身を焼くように疼く傷に耐えきれず甲高い悲鳴を上げたあとだ。
 熱い、熱い。
 火炙りにされているかのような錯覚に陥り、濃密なアルコールの匂いに喉を焼かれながら、輝二は拓也の名を叫んだ。
「あら、可愛く鳴けるじゃない」
「ひぅ…っ…!うぁあ……!」
 ダスクははじめて輝二の前で感情を見せた。まるで玩具を見つけた子供のようなあどけなさと、獲物を捕食する直前の獣みたいな獰猛さが混ざりあった表情が、輝二の瞳に映る。瞬間、血よりも赤い瞳が恍惚に歪んだ。その赤の奥で、藍色が揺れたような気がした。
 一瞬のような永遠のような火炙りが過ぎ去る。ぐったりと荒く浅く呼吸を繰り返し、叫んだことで失った酸素を取り戻す。火傷に似た傷口の疼きを感じつつ、輝二は辛うじて意識を手繰り寄せていた。
「神の子であるキリストは、ワインを己の血だと言った」
「……?」
「人間は、神により楽園から追放された罪人……アダムとイヴの血が流れている」
 語りつつ、ダスクは輝二の手首を縛り上げていた茨を解く。
 手首に食い込んでいた棘が引き抜かれ、血が溢れだす。長い時間拷問を受けた体に、逃げ出すような余力は残っていない。支えを失った体は、ぐったりとダスクに寄り掛かる。
「今のあなた、神と人間の血が混ざっているのよ、素敵だと思わない?」
「ひっ」
 首筋を赤い舌が這う。血とワインが滴る傷をなぞられて、輝二はビクッと体を強張らせた。
 熱を持った舌が首筋から鎖骨へと伝い降りる。アルコールで火照った体は舌が動き回る度にぴくりと跳ねる。嫌悪感とはまた違う未知の感覚に苛まれつつ、輝二は溢れてこようとする声を押し殺す。
「……やっ…っ!」
「敏感なのね」
 先程までの感情のない無機質な声は消え、うっとりとした艶っぽい声が輝二の鼓膜をうつ。耳を舐め上げられ、輝二の口から漏れたのは確かな高い喘ぎ声だ。
「今までは痛みで聞いていたけど、綺麗な体をこれ以上傷付けるのも忍びないわ」
 するりと、ダスクの手がぼろぼろになった輝二の服へ入り込み、脇腹の傷を指先で撫でる。
「ひぁ…!?」
「今度は快楽で聞いてあげようかしら」
「や、だっ! やめっ!」
「あなたも痛いより、気持ちいいほうが良いでしょう?」
 脇腹から這い上ってくる手から逃げ出そうと暴れるが、すぐに押さえ込まれ、傷が無駄に痛んだだけだ。
「私が女を教えてあげるわ。……愛しい炎の少年ではなくて申し訳ないけど」
 抗議の声をあげようと口を開くと、薔薇の花弁のような唇で噛みつかれるように塞がれた。
 反射的に固く目蓋を閉じ、口内に広がる己の血と葡萄の味を感じつつ、輝二は心中で愛しい少年の名を叫んだ。



混ざりあう血は禁忌の熱を孕む
(なぜ私の心は掻き乱されるのかしら?)
(貴女なら答えを知っていると思ったのだけれど)


ダスク姉様うめぇ(^q^)からはじまった。
20120119

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -