*初詣ネタになりきれない初詣 *ほのぼの *タイキリ



 聞こえてくる雑踏と賑やかな笛の音に、御神籤の紙をもったままキリハは眉を潜めた。
「……騒がしい」
「まぁまぁ」
 さも不機嫌そうに鼻を鳴らすキリハを宥めつつ、俺は自分の御神籤の紙を開いた。やった。中吉だ。
 ちらりと横目で見たキリハの御神籤は末吉だった。俺の結果は言わないでおこう。
「なにニヤニヤしてるんだ。気持ち悪い」
 顔に出てしまったらしく、肘で小突かれた。地味に痛い。
 仕方ないじゃないか。キリハと初詣にこれるなんて嬉しいんだからさ。そう言ったら今度は脇腹に肘を入れられた。痛いけど、そっぽを向いたキリハの耳が真っ赤だったからよしとする。あぁ、可愛いな。
「用が終わったらなら、もう帰るぞ」
「いやいや!少し気が早い!」
 もともといいところのお坊っちゃんなキリハは、こういう騒がしい場所を極端に嫌う。今この場にいるだけで奇跡に近いんだ。もう少しだけ楽しまないと勿体ない。
「他にすることもないだろう?」
「確かにそうだけどさ……」
 もうあらかた神社は回ったし、やることも終わったからな……。口ごもっていると「帰る」と歩き出そうとする。そんなキリハに待ってくれと声をかけるまえに、背後から俺を呼ぶ声がした。
 ふりかえると、見知らぬ女性が二人にこにこと笑っている。
「君たち可愛いね」
「暇なら私達と初詣しない?」
 あぁ、逆ナンか。そう思う前に、足を止めていたキリハに「行くぞ」と腕を引かれた。あ、不機嫌だな。
「ちょっとくらいいいじゃない」
「ね、行きましょう」
 少ししつこいな。女性の一人がキリハに触れようとするのをみて、俺は即座にキリハを抱き寄せる。
 驚くキリハの頬にキスをして、俺は目の前の女性たちに笑いかけた。
「すみません。今デート中なんで他をあたってください」
 俺の言葉に固まった女性たち。その隙にに顔を真っ赤に染めて固まるキリハの手を引いて、俺はその場をあとにする。
 少し離れた場所でキリハの様子をうかがう。まだ顔が赤い。
「帰ろう」
 そう声をかけると「なんでだ?」と返ってきた。
 だって外にいると、のんびり楽しめないじゃないか。大っぴらに恋人らしいこともできない。
「やっぱり俺の家で二人っきりのほうがいい」
「まて。いつ俺がお前の家に行くと「いいだろう?」
 反抗しようと開いた唇を人差し指で押さえてにっこりと笑えば、くちごもる。そして間もなく、仕方ないなと言いたげに、キリハは肩をおとした。



まったりのんびりと
(お前と過ごす正月は悪くないが、)
(その笑顔は反則だ)

pikaモン様へ捧げます!リクエストありがとうございました!
20120102

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