※十闘士が皆の年末にお邪魔するよ! *擬人化要素あり *デジフロオール!



・輝二とヴォルフ
…視線を感じる。
「…ヴォルフ?」
「ああ、気にしないでやってくれ」
口調は大人なのに、こちらを見る淡い金の瞳はきらきら輝いている。まるで新しいおもちゃを見つけた子供のようだ。
「…でさ、輝一」
『うんうん』
「……」
くすっと電話の向こうで輝一が笑った。
『レイも不思議そうな目でこっち見てる。今から替わるから、輝二もヴォルフに替わってあげなよ』
「そうだな」
いったん携帯を耳から離し、ヴォルフに差し出す。と、戸惑ったように彼は俺を見つめ返した。まっすぐに相手を見るんだな、と変なところで感心する。
「第一声は『もしもし』だ。向こうはレーベに通じてるから、あとは好きなように話せばいい」
電話口から密やかにこぼれる声に、輝一も似たようなことを話しているのだと察する。有無を言わせずヴォルフに電話を持たせると、しばらくの逡巡の後ようやく受話器に耳を当てた。
「…モシモシ」
『モシモシ?』
「レーベ?」
『うわ、ヴォルフだ』
「レイ」
『ヴォル』
「……」
『……』
おいお前ら、はにかんでないでなにか話せよ。
『あ、友子さんが』
「うん?」
『…もしもし、ごめん、輝一に替わった。悪いんだけど輝二にまた今度って伝えておいてくれない?母さんが呼んでて…』
「だって、輝二」
「分かった。ならまた年明けにって伝えておいてくれ」
「また年明けに」
『うん。じゃあ、よいお年を!』
「よいお年を」
しばらく受話器に耳を当てたままじっとしていたヴォルフだが、『電話が切れる』という状態を理解したらしく名残惜しげに耳から離した。
「…輝二」
「なんだ?」
「面白いな、電話って」
「それはよかった」
きらきらした目は変わらない。…なんだか、餌をねだる犬のような気配も感じるんだが。
「アグニにもつながるか?」
「拓也になら」
きらきら。
「…電話、かけるから貸せ」
「ああ」
…まあ、あいつにかけるのは久々だからいいか。
(大好きな人へ、電波よ届け!)




・輝一とレーベ
「…悪いな、折角電話してたのに」
「俺たちはいつだってできるからいいよ」
人参を千切りにしながら答える。レーベは物憂げに首を傾げたけれど、少し困ったようながらも笑って「ありがとう」と言った。
「あらかた芋は潰れたがどうすればいい?」
「次は栗と林檎を混ぜるんだけど多少冷めても大丈夫だし、今はおいといていいかな。手透きだったら大根を千切りにしてくれない?」
「なに作るんだ?」
「なます。言っても分からないよねー」
「そうだったな」
「食べたら分かるよ。そのまま作り方も覚えて、来年皆に作ってあげるといい」
「ああ。…お正月って、楽しいな」
「でしょう?」
(ちなみに木村家のおせちは甘党仕様。今年の購入強化品は伊達巻き)



・拓也とアグニ
「あー馬鹿になるー」
だらんと炬燵の天板に寝そべるのは、なにを隠そう炎を操る歴戦の戦士。なのに形無しもいいところである。
「脳みそ溶けてるー」
「はいはい」
「平和だー」
「、」
「あったけー」
そうか、これがアグニにとっての『平和』か。なにをするでもなくだらだらして、好きな人から電話がかかってきたらはしゃいで、何の気兼ねもなく蜜柑をむさぼって、うだうだして。
「アグニ」
「んー?」
「幸せ?」
「眠い」
「……」
「あー」
おい、俺の感傷返せ。
(センチメンタルも溶け落ちる)



・信也とラーナ
「私ねえ、ジャパニーズ年末年始って聞いて楽しみにしてたんだけど、」
「うん」
「もしかして、意外と年末って娯楽ない?」
「案外ね」
「期待はずれー。福笑いとか花札とか麻雀とかしないの?」
「ちょっと待ってなにその最後の博打臭」
「え、だってお年玉って」
「そういう稼ぎ方する訳じゃないよ!?」
「へー優しいのねー日本の大人は」
優しいのか。優しいんだろうな。
「ラーナって年いくへぶぅっ!!」
「レディに歳聞くとか信じらんなーい」
「レディ…?」
「なにか文句でも?」
「…いや、レディならレディでいいんだよ。つまり僕より年上だよね?だからお年玉くださへぶぅっ!!」
「いい子はさっさと寝ましょうねー」
「まだ七時…」
(見た目は子供、中身は)



・純平とブリッツ
「お、紅白始まったな」
「コウハク、」
「んー、まあ要は超特大コンサート中継だ」
「ふうん?」
あ、ぴんときてないな。それは分かりつつも、残念ながらどこをどう解説すれば通じるのか分からなかったのでスルーさせていただく。
「見てりゃ分かるよ」
「うん」
「……」
「ん?」
「ん?」
「うわっ」
紅白の開幕を知らせて画面の中で吹き揚がる花火に、リトは肩を派手にひきつらせた。
「大丈夫?」
「お、おお…」
職業柄、爆竹とかにも弱そうだ。あと小林幸子にもビビらされるな、この様子だと。
「チャンネル変えるか?」
「いや、」
「家くらいの大きさの上半身マネキンとか出るぞ」
「お前たちは毎年そんなホラー番組を見ながら年を明かすのか…!?」
「うん?」
あれ、誤解植えつけた?
(紅白=怖い)



・友樹とチャック
「―――――――!!」
「ごめんごめんごめんごめんっ!!」
「…えっと」
僕は、完全に傍観体勢に入っているチャックを振り返った。
「あれ、誰だっけ」
「メルさんだよ」
「ですよねー」
お兄ちゃんの肩を掴んでがっくんがっくん揺さぶりながらぼろぼろ泣いているあの銀髪のお兄さんは、やっぱりメルキューレさんでしたか。
「…どうしたの?」
「物狂い」
「はあ」
「直樹ー、メルさんにお酒飲ませた責任とって寝落ちするまで面倒見てあげてね」
「うわああああ」
…聞こえてるのかな。
「ねえ友樹、日本酒ってアルコール度数高いの?」
「うーん、僕ちょっと分かんないや」
「まあ、たぶん高いんだろうな。一杯で堕ちるメルさんも大概だけど」
でもロティさんは気に入るだろうな和酒、来年のお正月には絶対持ち出してくる、なんとしてでも阻止しないと。呟くチャックの横顔を眺めていると、不意に強い視線で射ぬかれた。
「友樹」
「はいっ」
「いい?お酒に飲まれちゃいけないよ」
今までなにがあったんだろう…。
(頑張れチャック)



・直樹とメルキューレ
「―――――――!」
「はいはいはいはいはい」
ぼろぼろと涙をこぼしながら俺を睨む銀が間近にあった。泣き止み方を知らないんだろうな、と頭の中の冷静などこかが呟く。
「―――――――…」
「うんうん」
「――」
「聞こえてるよ」
たぶん、なにを言っているのか理解しない方がいいんだろう。メルキューレは、自分の内側をさらすことをきっと嫌がっている。
「よしよし」
でも、聞こえてるよ、と。俺はここにいるよ、と。そういう言葉は求められている、メルキューレだって求めてくれると俺は信じてる。
(強がり、泣き虫)



・勝春とアルボル
「……」
「……」
テレビから視線をはずし、横目にアルボルをうかがってみる。その古木の瞳は確かにテレビを見ていた。
「……」
「……」
いや、確かに番組名は『笑ってはいけない』だけどさ。普通、笑わないか?笑うために作られた番組だぞ、制作者も笑われて本望だろ。だから笑ってやれよ、黙々と蜜柑食ってないで。ってちょ、おい、お前どんだけ蜜柑食ってんだそれいくつ目だ、おいアルボル。
「……」
「……」
「ぶはっ」
「……」
テレビに目を戻したら思わず吹いた。画面の中でもおなじみのブザーが鳴り響く。今のは俺も罰ゲームだな、と思いながら眺めていると、ふと声がした。
「楽しいか」
首を横に回すと、また新たな蜜柑を剥きながらアルボルが俺を見ていた。
「お、おう」
お前は楽しくないのか。そう聞いてやるつもりだったのに、
「そうか」
にこりと、このタイミングで笑うから。
ああ、笑えんじゃん。なんだかひどく安心していたら、開きっぱなしだった口の中に蜜柑を突っ込まれた。
(炬燵と蜜柑と笑う子供がいたらそれで幸せ)



・鉄平とグロット
「案外和酒もうまいもんだな。今まで洋酒ばっかだったけどよ」
「よく飲むなーロット。俺とそんな変わんない身長っあいたっ!!殴ることないだろ!!」
「てめえこれから身長のしの字でも言ってみろ、ぶん殴っからな」
「事後通告は卑怯だ!」
「へん」
でも、本当に面白いくらいすいすいと酒が入っていく。俺と大して大きさの変わらないこの体のどこに入っていくのか不思議だ。
「なあなあロット、十闘士ってし、ってぇ殴んなよ!!別に身長のこと言う気なかったよ!!」
「お?そうか悪い」
「しの字に反応しすぎだろ!そんなに、」
「んだぁ?」
「…身長って言ったら殴るんだったな」
「ようやく分かったか」
「身にしみてな。…って違う違う!話それてるっての!」
「なんだよ」
「だからぁ!十闘士は新年どう過ごすのかって聞きたかったの俺は!」
「新年の過ごし方ぁ?」
グロットはきょとんとした顔で杯をおいた。
「お前ら十闘士って日本流の年の過ごし方してないだろ?でも俺外国のことよく知らないし、どうなのかなって」
「俺らも外国のことよく知らねえぞ?」
「へ?」
からからとグロットは笑う。
「俺らは国籍なんてないからな。日本流も外国流も、なんも知らねえよ。一回ノリで、なんだぁ、『きよしこの夜』を歌ってみようとしたんだが、皆見事に歌詞がばらばらでよ。日本語英語フランスイタリア、飛び交うったらもう」
「…お前らなんなの?」
「俺も知らねえよ。プログラムした奴の国籍じゃねえか?」
なんとなく、黙り込む。こんなに生き生きした奴なのに、グロットは確かに誰かに作られた生き物で。俺とは違う、生き物で。
「…でもよう」
グロットは、笑う。
「こうやって皆で日本流の年の過ごし方吸収したから、来年からはきっとこういう風に過ごすだろうよ」
「…そうなの?」
「案外和酒もうまいしな」
「本当にお前、酒のことばっかだな」
「うっせーよ。酒と仲間で人生薔薇色だろ」
「…どんな国籍だろうと」
「おう。だから俺らは幸せだぜ?」
笑った。笑えた。
「俺も酒飲みたい。もう仲間はいるから」
「餓鬼はやめとけ」
「うっせ、俺とロットとそう身長変わんねいってぇ!!」
「ばーか」
(低身長、ハイテンション)



・泉とフェアリ
テレビの画面の中で色とりどりの服が動き回る。眺めてはいるけど、聞こえてはいない。テレビはミュート。
「静かね」
「そうね」
お父さんお母さんは外に出かける準備をしている。今年は夜中に初詣に行くみたい。
「…私ね、」
ずっと長いことイタリアにいたでしょう、だから日本流の年の越し方って未だに馴染めてないの。
「なら私と一緒ね」
「…フェアリ」
「というか、それでも私の先輩ね。私なんて初めてだもの」
「そう、ね」
ふふっと笑う。
「来年は日本の年越しになるんだろうなあ、私たちも」
「悪くはないでしょ?」
「ええ」
馴染めてない、胡散臭い異物感が楽しくもあったりする。
「ただ、初詣っていうゴールがないから私たちは延々飲み続けるかも」
「やだ、おじさんじゃない」
「おじ…っ」
地味にショックを受けたらしいフェアリの名前も呼んで、お母さんが私たちに出発を促した。
(もう何分後にはお正月!)





十闘士と子供たち+大学生1名で計20回萌え殺されました。新年早々髪の毛だけでなく全身脱毛余裕(^p^)
まず10回ぐらいは読み返したからとりあえず弟の部屋の壁が大変なことになった。というか叩きすぎて怒られたというか。とりあえず親父に奇妙なものを見る目を向けらたというか。よくわからないことを散々叫んだと思う。
羊ちゃんのところの十闘士好きすぎて辛い/////
もっと十闘士流行ればいいのに!みんなもっと十闘士好きになってよ!と騒いでいた元旦です。
新年早々ホントに無茶なリクエスト受けてくれてありがとう!そしてありがとう!
20120101

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