*トーマさんが居眠りしてる話 *ほのぼの *トーマサ




「トーマ」
 すぅすぅと小さく寝息をたてる男に、小さく呼び掛ける。反応がない。
「トーーマ」
 次は少し大きな声で呼び掛けるが、やはり返事はない。端正な顔が少しぴくりと動いたぐらいだ。
 そんな彼を見て、マサルは小さく舌打ちした。
「まったく。資料とってこいって言ったくせによ」
 ぶつぶつと文句を並べて、デスクの上に資料を置く。
 本日当直だったマサルは、勤務時間外にデータのまとめ作業をしていたトーマの手伝いをさせられていた(マサルが暇だとぼやいたからだ)
 しかし、マサルが資料をとりに行っている間に、トーマはデスクに突っ伏して眠ってしまったのだ。トーマの寝顔を見て、ふと連日のデジモン事件報告書で、トーマがなかなか眠れないと言っていたことを、思い出した。
 マサルは一つため息をついて、隣の仮眠室から毛布を引っ張り出してくる。戻ってくるなり無造作にトーマに毛布をかけて、彼の隣の椅子に座った。
 することもなくなり、暇に戻ったマサルはぼんやりとトーマの寝顔を眺める。いつも考え事でいっぱいいっぱいといった表情はなく、ただ穏やかな寝顔だ。眉間に皺もよっていない(皺の原因はだいたいマサルだが)
 もともと顔立ちはいい。ただいつも気難しそうな顔をしてるので、そのよさが隠れてしまうのだ。
(普段からこーゆー顔すりゃあいいのに)
 出来心で、静かにトーマの額に手を伸ばす。悪戯をしている子供のようで、少しわくわくした。
「……ん。……マサ、ル……?」
 その手は寸前で開いた蒼に遮られた。慌てて手を引こうとしたが、その手はトーマに捕らえられる。
「トーマ?」
 まだ寝惚けているのだろう。ぽやーっとした表情のまま、トーマは掴んだ腕を引き寄せて、その勢いのままマサルに口付ける。
「!?」
 一瞬の出来事。トーマはへにゃとマサルに笑いかけると、またデスクに突っ伏して眠ってしまった。
 嵐がさった雰囲気に戻ってきたのは安らかな寝息。
 マサルだけは耳まで顔を赤くしながら、金魚のように言葉を発せない口を開け閉めするだけだ。

まるで子供の戯れのように
(いま部屋が暑いのは)
(間違いなくこいつのせい)

眠いと子供っぽくなるトーマさん。
20111215

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