*家庭教師パロ *拓也が変態 *拓二
大好きな声を聞くのはいい、ただその声が死ぬほど嫌いな数式の説明をしているとなると話しは別だ。いつまでも聞いていたい声が、子守唄にしかならない。
だからついつい小難しい数式が書いてあるノートじゃなくて、整った顔立ちとか、綺麗な青い瞳とか、服から伸びる白い手とかに目線がいってしまうわけだ。
「だからXがこっちに……」
声が止まると同時に、額にゆるい衝撃。ノートで額を叩かれた。ぺしっ、と間抜けな音。
その向こう側には不機嫌に眉を吊り上げた男が一人。
「ちゃんと聞いているのか」
問いかけてるのに語尾が上がらないのはもうご愛敬。「ちゃんと聞いているよ、輝二」と言えば第ニ撃目が額を襲う。
「先生と呼べと何度言えばわかる」
「家庭教師と生徒以前に、俺らは恋人でーす」
そう切り返して顔を近づけると、輝二は顔を真っ赤にして頬をつねってきた。
「せーひょにほーりょふはんはーい(生徒に暴力反対)」
「教師にセクハラ反対だ、馬鹿」
セクハラなんて人聞きの悪い。スキンシップだよスキンシップ。もち恋人どうしの。
だいたい折角の休みで、珍しく輝二も午前中から居るのに勉強ばっかはもったいないぜ。
俺だって健全な男子な訳ですし、勉強よりは愛しい人とイチャイチャしたいわけですよ、わかります? ねぇ、わかります?
それでも愛しい恋人は「テスト、近いだろ」の一言で俺を缶詰にするんだ。
「まったく、俺と同じ大学に来たいんだったらもっとちゃんとやれ。そもそも、お前やる気を出せばちゃんと出来るだろう」
それは輝二せんせーの教えがいいからですー。他の教師じゃこうはいきませーん。
「当たり前だ。俺だってお前に同じ大学に来てほしいんだよ」
あ、デレた。でも本人は気付いてない。
「じゃあちゃんとやるからご褒美くださいよ、輝二先生?」
「何を馬鹿なことを」
腰を上げて先生に覆い被さる。ふわりと爽やかなコロンの香りが鼻を掠めた。
この香りは好きだ。
もっと感じたくて首筋に顔を埋めると、焦ったように身をよじる。あ、ヤバい。ムラムラしてきた。
「離れろ馬鹿!」
「ヤダ。せんせーとイチャコラしたい」
高校生の性欲なめんでくださいよ。
舌舐めずりして、するりと服の中に手を忍ばせるとビクリと過剰に反応する。相変わらず感度いいな。
「いい加減に……しろっ!」
このまま行為に雪崩れ込もうとしたら、ゴツンと頭に衝撃をくらって視界がぶれた。
思春期ですから
(ここで頭突きは、ない)
(もうお前なんか知らん!)
高校生拓也と大学生輝二でした。はい、とても楽しかったです。
20111205