ただのバカップル *ほのぼの甘 *李啓+α





 ふにっ。そう効果音が付きそうだ。とジェンは真正面でパンを口に付けたまま、きょとんとしている啓人を見てそう思った。
 人差し指は、啓人の左頬に柔らかく沈んでいた。
「ジェン……?」
 ジェンは啓人の呼び掛けに答えず、ぼんやりと人差し指を離したり近づけたりと感触を楽しんでいる。
(柔らかいな……)
 ただなんとなく触れてみて予想外に手触りがよかったのか、病み付きになりそうだ。
 啓人はそんなジェンの突然の行動に戸惑い、されるがままだ。
 しばらくは右手の人差し指だけだったが、やがて右手全体で啓人の頬を包んでゆるゆると感触を楽しみ始めた。
 撫でるというか揉むというか、微妙な動きだ。
 啓人はパンを食べるのを諦め、大人しくジェンの好きにさせて、黒い瞳に自分が写っているのを眺める。
(ジェンの手、あったかいなぁ)
 だんだんと撫でられることが心地よくなって、自らジェンの手にすりよった。
 ジェンもそれに気をよくしたのか、目を細めて左手でも啓人の頬に触れた。
「楽しい?」
「楽しいよりは、柔らかくて気持ちいいかな」
「そうなの?」
「うん」
 啓人もそれを聞いて、ジェンの頬に手を伸ばす。
「……あまり柔らかくない」
「啓人が特別柔らかいだけだよ」
 ふにふに。ふにふに。
 啓人は何度かジェンの言葉を反復する。
 ふにふに。
(それって、僕が太ってるってこと?)
 確かに啓人はジェンのように運動をしているわけではないので、彼よりも肉付きがいいのは当然だろう。
「……ジェンのバカぁ!」
「え!?」
 突然泣き出した啓人に、ジェンは目をぱちくりとさせ、あわあわと啓人を慰めはじめた。


「……啓人たち、此所が教室だって忘れてるよ」
「何時ものことでしょ」
「けっ、イチャつくならよそでやれ」
「男の嫉妬ほど見苦しいものはないんじゃない?」
「嫉妬して悪いか! リア充爆発しろ!」



無意識なほど質が悪い
(ダイエットするっ)
(ダメ。啓人はそのままでいい)


例のごとく、バカップルのお話からネタ拝借。このあと小さな喧嘩になりました。
啓人の頬はとても柔らかそうです。頬だけじゃなくて、全体的にも(yr
20111203

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