*太一さんちょっと変態入ってる *甘甘 *太光




クリームの甘さと、コーヒーの苦さが同時に口の中でとけていく。スプーンを入れた後のそれは、綺麗に白と黒の層になっている。すごく美味しい。

「ティラミスってさ、イタリア語で“私を天国に連れてって”なんだってさー」

 太一さんの家にお邪魔して、部屋でティラミスを食べているときに唐突な言葉。とりあえずは「そうなんですか」と適当に相づちを打って流しておく。
 見れば太一さんは何故だかにこにこと笑っている。いったい何を考えているんでしょうか。
「……太一さんは食べないんですか?」
 さっきから僕だけが食べていますが、太一さんのはまったく手を付けられていない。ただ僕が食べるのを眺めているだけ。
 太一さんは「光子郎を見ているだけで腹一杯だからさ」と恥ずかしい台詞をさらりとはいてくる。いちいち反応していたらキリがありません。
「おいしい?」
「はい。とても」
 そのやり取りで、これは太一さんが作ったのだとわかった。本当に何でもそつなくこなせる人だなぁ。
 「そっか」と嬉しそうに笑う彼に思わずときめいただなんて言えない。誤魔化すようにスプーンを口に運ぶ。……やっぱり美味しい。
 最後の一口を口に含むと、向かい側に座っていた太一さんが隣に移動してきた。
「なんですか?」
 腰に手を回してくる太一さんにちょっとした危機感。
「なにって、さっき教えただろう?」
 悪戯が成功した子供みたいに、太一さんはにやにやと笑う。あぁ、何となくわかってしまった。
「ティラミスの意味……」
「俺を天国に連れてって、なんつってな」
 本当にあなたって人は……。まぁ、食べてしまった後で言っても仕方ないんですけど。
 こんな手の込んだことをしなくても、僕は貴方を拒むことなんてしないのに。絶対に言ってあげませんけど。
「……僕は太一さんがいてくださるだけで、天国と同じなんですけどね」
「……っ! その殺し文句は卑怯だろ」
 ちょっとした仕返しです。
 そう言う前に視界が反転する。持っていたスプーンが空になった容器に落ちて、小さく金属音を奏でた。


ティラミスと金属音
(甘いけど、少し苦いな)
(ティラミスですからね)


友人バカップルの実話からネタを拝借。
ティラミス発祥のベネチアでは、ティラミスは夜遊びをする前に食べた”色っぽい”デザートだそうで。つまり「私を持ち上げて」というのは「私を元気にして」「天国へ連れていって」という意味(ry
20111202

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