*キリハさんがタイキを看病?する話 *甘? *キリタイ




戦線で敵が引き上げていくのを見届けていたら、目の前でふらりと赤が揺れた。
「タイキ……!」
 今にも地に沈んで行きそうな男の体を支える。その身体はあまりにも軽く感じた。
 敵の攻撃を受けたようすはないのに何故だ? そう首を傾げると「タイキ、マタ頑張リスギデ倒レタ」とバリスタモンが言った。……つまりは過労か。
 慌ているデジモンを放置して、タイキを抱えあげる。
 とりあえず比較的静かな岩影へ移動し、バリスタモンから手渡されたクッションをおいてタイキを横たえた。
 バグラ軍は完全に撤退したあと。しばらくはネネ一人に任せておいても大丈夫だろう。
 すやすやと寝息をたてるタイキに、着ていた上着をかけて俺も岩壁に寄りかかる。眠るタイキの顔はどこかあどけない。
 ……こいつは過労で倒れるまで自分を追い詰めていたのか。
 頑張りすぎ、と言えば聞こえはいいが、悪く言えば自分の体調をしっかりコントロールできていないということだ。自分の身体をしっかりと管理できなければ、いざと言うときに大変な事態を引き起こしかねない。
 それをこいつに諭したところで無駄なのはわかっていた。自分のためでなく、他者のために己のありあまる才能を使うこの男のことだ、いくら言っても聞かないだろう。
 それがタイキの美点であり欠点、強みでもあり最大の弱みでもある。こいつがこういった性格だからこそ、クロスハートはここまで大きな軍になったのだからな。
「ごめん、キリハ……」
 目が覚めたのか。弱々しい声で謝罪するタイキに「いいから寝ていろ」と促す。主戦力が倒れたままでは話しにならん。
「バグラ軍は……」
「撤退した。今はネネに任せてある」
「そう、か」
 無理矢理身体を起こそうとするタイキを片手で押さえつける。片手ですむくらい回復してないくせに、なにが出来るというのか。
「お前は自分の身体を酷使しすぎだ。人間の身体はデジモンのように頑丈ではない」
「でも……」
「五体満足に身体も動かせないだろう。いいから寝ていろ。そうやって無茶をされたほうが迷惑だ」
 そう言うと渋々と言った感じで体の力を抜く。やっと休む気になったか。
(世話のかかるやつだ)
 俺がいないほうが寝られるだろう。そう思って腰を浮かせると服の裾を引かれた。
 見るとタイキがぼんやりとした表情で、俺の服を掴んでいた。
「……タイキ?」
「え、あ……ごめんっ」
 無意識の行動だったんだろう。慌てて引かれる手を掴む。喉の奥で笑いを押さえる。
「寂しいのならば、そう言えばいいだろう?」
 絡めた指に唇をよせると、クロスローダーよりも赤くなるタイキが面白い。
 よほど恥ずかしいのだろう。俺の上着を頭までかぶって隠れた。しかし、手は離さないようだ。
「タイキ。お前はもう少し、俺を頼れ」
「……ありがとう」
「どういたしまして、我が将軍」
 冗談混じりにそう言ってやると、手に力が込められた。
 お前が身を呈して戦うというのなら、俺はタイキの剣となって敵を切り、降りかかる矢から守る盾となろう。俺にはそれぐらいしかできない。
 将軍、というよりも姫様だな、お前は。







剣となり盾となり
(全部捧げてやろう)
(俺の全ては愛するお前のために)

漫画版の紳士キリハさんを見習って書いたら見事に失敗したの巻。
20111202 お題:鳥籠の月様

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