*トーマ様がマサルの手当てをする話 *甘? *トーマサ




まったく。どうして君はこうも生傷ばかり作ってくるのだか。
 そうため息をはいて消毒液を染み込ませた脱脂綿を傷口に押し当ててやる。間抜けな悲鳴が聞こえるが知らぬふり。自業自得だ。
「しかたねーだろ。デジモン相手にしてんだからさ」
「もう少し上手いやりかたがあるだろう」
 最早、デジモンと素手でやりあうこのとんでも人間の傷の手当ては、僕の役目と化している。
 DATSの医療班だと「必要ねーから」の一言で逃げ出してくるから仕方がない。僕としては傷の手当てをしてやることに異存はないのだが、こうやって自分自身に傷を付けてくるのはあまり宜しくはない。
 母親の遺伝なのだろう。綺麗な肌は生傷ばかり。痛々しいことこの上ない。
 左腕に包帯を巻いて、金具で止めるとマサルから抗議の声が上がった。
「包帯なんてオーバーだろ」
「傷口から細菌が入ったらどうするんだ」
 本当に自分の身体には無頓着な男だな、君は。もっと自分を大事にしてくれないだろうか。
 包帯を取ろうとする腕を押さえつけて、再びため息を一つ。
「動き難い」
「では怪我をしないことだな」
 訴えを一蹴して他にも怪我がないか確認する。
 大方大きな物は治療済みだ。小さい傷は消毒するだけにしよう。
 マサルが「まだ終わらないのかよ」と言いたげにそっぽを向いたとき、右見の下から頬にかけて細い切り傷があるのを見つけた。
「まったく、君は顔にまで……
「小さいのは別にいいぜ。唾つけときゃ治る」
「……」
 それは動物だったら……いや、人間も動物か。
「〜〜っ! なにすんだ!?」
「君が唾をつければ治ると言ったから」
 消毒がてら舐めただけだ。マサルは顔を真っ赤にして辺りを見回している。大丈夫だ。ここには誰もいない。
「だからって舐めるやつがあるか!」
「僕は舐めてほしいのかと思ったよ」
「な! んなわけあるか!」
 顔が真っ赤になったまま暴れるマサルを宥めつつ、切り傷を指先で撫でる。
「な、なんだよ」
「いや、君の顔に切り傷を付けた存在に、妙に苛立ちを感じてね。傷を上書きしてみようかと…………冗談だよ、マサル」
 笑うとマサルは青ざめた。まぁ、あまりにもこういったことが目立つなら、本気にならざるを得ないけどね。




切り傷と確信犯の笑顔
(もう怪我なんてしねぇ)
(それはいい心掛けだね)

独占欲が強いトーマ様だと萌えます(私が)そんなトーマを優しく包む母性の強いアニキだと萌えます(私が)
20111202

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -