*タケルも大輔も狂気 *シリアス *タケ大




 背には冷たい床の感触、首には冷え切った君の手が添えられている。
 ススッと僕の首を撫でる君の冷たい指先が、とても艶めかしい動きだなんて、今考えてる場合ではないのは重々承知している。
 でも夕日に照らされる君の、泣きそうな微笑みがあまりにも綺麗だから、この状況もそう悪くないな、なんて馬鹿なこと。
 腹部に感じる君の重みと、首にかけられた手が力をいれてくる感覚が妙にリアルで、逃避しかけていた思考が現実に引き戻される。
 どうしてこんな状況になったんだっけ?

「あの女と何してたんだよ」

 あぁ、確か呼び出されて、告白されたんだ。
 僕には君がいるし、いつものように丁重にお断りしたんだけど、無理矢理キスされたんだ。そしたらたまたま通りかかった君に見られて今に至るのか。
「お前、言ったじゃないか。あんなことはもうしないって」
 これが初めてではない。中学に上がってから何回も同じことがあった。その度に君に露見して怒られてたね。僕としては不可抗力なんだけど、君はそうは思えずに浮気≠セと捕えている(僕が愛しているのは君だけだというのに)前回のことでとうとう君が泣き出して、「もうしない」って約束したっけ。
 僕としては本当に不可抗力なわけだけど、君にとっては僕は嘘をついた裏切り者≠チてことなんだね。まいったな。
「僕が好きなのは君だけなんだけどな」
「嘘つき」
「嘘じゃないさ」
「出来もしないことを約束した時点で、それは嘘だ」
 はたはたと僕の頬に落ちてくる雫は、君の涙と思えないほど冷たい。
 絞められている首が本格的に苦しくなってきた。
 右手で泣いている君の後頭部を引き寄せてキスをした。涙のせいでしょっぱい。
 腕の力が緩んだ隙に身体を起こして君を強く抱きしめる。僕は咳き込みながらも新鮮な空気を肺一杯に取り込んでやった。
 腕の中で嗚咽をかみ殺して泣く君を力一杯抱きしめる。
「ごめんね」
 君のふわふわした髪を撫でながら囁くと、強くしがみ付かれた。
「絶対に、許さない」
「じゃあどうすれば許してくれる?」
「一緒に死んでくれ」
 君の口からでてきた言葉にたいして驚きはしなかった。もともと君がすごく嫉妬深いのはわかっていたし、一時期はそれが可愛くて、わざと煽っていたから。
「そうすれば、もうこんなことは起こらないだろ?」
 確かにそうだね。僕の命一つで君に愛を伝えられるなら安いものか。

「大輔が望むなら、僕は構わないよ」
 
 そう言ったら君は涙を流しながら笑った。綺麗だけど歪な笑顔だった。

嘘という裏切りの末路
(どうせなら誰も見つからないところで)
(永久の愛を誓おうか)




嘘という裏切りの末路

 タケルが好きすぎて狂った大輔と、そんな大輔を甘受するやっぱり少し狂っているタケル様。生きていられるに越したことはないけど、執着するほどでもないという命に淡白なタケル様(わかりづらいわ)
20111129 お題:鳥籠の月様

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