*いい兄さんの日 *ほのぼの? *拓ニ←輝一




 弟がまた拓也と喧嘩したらしい。これまた珍しいことに、弟が原因なんだって。
 彼氏と喧嘩した弟が俺の所に逃げ込んでくるのは、今に始まったことではない。かれこれこの二ヶ月、平均週に二回ぐらいは輝二はこうやって俺の所にやってくる。
 やりかけの宿題を片付けながら、部屋の隅で体育座りのまま落ち込んでいる輝二を見やる。その落ち込みぐあいも凄まじく、部屋の一角にキノコでも生えるのではないかというレベルだ。……食費浮くかな?
 近づくと「今度こそ嫌われた」とか「もうお終いだ」とかぶつぶつ言っているのが聞こえる。まぁ、あの拓也が簡単に輝二を手放すはずがないと思うけど。
 普段は男ですら憧れるぐらい男らしい輝二は、恋人一人でこうも女々しくなる。これもギャップ萌えとかいうやつなのかな。そんな輝二もとても可愛い。
 ブラコン? 誉め言葉さ。
「輝二、クッキー食べるか?」
「輝一の作ったやつか?」
「あぁ。チョコチップクッキーだ」
「……食べる」
 甘党は甘いもので釣るのが一番。見事に釣られてきた輝二は大人しくテーブル横の座布団に座る。
 俺は台所に行って皿に持ったクッキーと、輝二の好きなココアを入れるために牛乳をレンジで温める。我が家に輝二専用のカップが置かれているくらい慣れた作業だ。
 温める間に携帯を開くと、案の定拓也からメールが入っていた。内容はもちろん輝二のことだ。
 まったく。せっかく可愛い弟との付き合いを認めてやったというのに喧嘩ばかり。いい加減にしないと俺が輝二を奪い返すぞ。
 そんなメールを送信したと同時に、牛乳が温め終わった。ココアパウダーと砂糖を入れてかき混ぜて、クッキーを持ってテーブルに戻る。
 これで拓也は10分後ぐらいに血相を変えてここにやってくるだろう。単純馬鹿の扱いは楽でいい。
 ココアを手渡し、まだいささか暗い顔をしている輝二の口の中にクッキーを放り込む。
 面食らった顔をしたが数回口を動かした後に表情を緩めた。あまり感情を見せない輝二が拓也以外で見せる幸せそうな顔だ。
「……ありがとう」
 小さく礼を述べる輝二に小さく微笑む。
「礼なんていいんだ。どんな理由でも輝二がここにいることが嬉しいんだから」
「輝一……」
 むしろ、拓也を止めて俺に乗り換えればいいのに。でもそれは俺の幸せであって、輝二の一番の幸せにはならないんだよな、皮肉な話。
 あぁ、いまさらながら拓也に苛立ってくる。もう一度輝二をかけて勝負するか。いい加減にお灸を据えてやらないと。
 これも全部輝二の幸せのためだ。
「……拓也に輝二を返したくないな」
「ん?」
 小さく呟いた言葉は輝二には聞き取れなかったようだ。
 そして直後に響いた輝二を呼ぶ声が、この時間の終わりを知らせた。


繰り返される幸せ論。
(やぁ、早かったね)
(お前があんなメール寄越すからだ!)


 何だかんだで拓ニに甘い輝一兄さん。にしても何で拓ニは喧嘩したのか← そして私は何がしたかったのか。輝一兄さんは母と輝二が幸せであればなんでもいいのです。
20111123





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