*甘? *マサ拓


 進化を解いて、にかりと向けられた笑顔。素直に、眩しいと思った。

「うし、今日は怪我してねぇな」

 帽子とゴーグルを取られてぐしゃぐしゃと乱暴に髪をかき回される。ちょっと痛いけど、それが温かくて心地いいからされるがまま。
「毎度毎度んな心配しなくても平気だってのに」
 むしろ生身で戦ってるマサルのほうが心配だ。マサルには俺と違ってパートナーがいるんだから、わざわざ前線にでなくてもいいのにさ。
 そう言ったら不機嫌な顔されるから言わないけど。
 遠くでアグモンがマサルを呼んでいる。戦ってお腹すいたんだろうな。マサルが「先に行ってろ!」と叫ぶのを聞きながらぼんやりと考えた。というか、なんで先に行かせた。
 遠ざかるアグモンを見てそんな疑問を抱くと、体が後ろに引っ張られる。その温かさとたくましい胸板を後頭部と背に感じ、マサルに抱き締められているのだと理解した。おい、外でなにしてんだ。
 抗議しようと首を背後に向けると、言葉を発する前に口を塞がれた。かさついた唇が妙に熱い。
 唇を離されて、マサルは優しく笑んで俺をさらに強く抱き締める。
 あぁ、ちくしょ。顔が熱い。その笑みは反則だ。鳴りやめ俺の心臓。
「マサルは何がしたいんだよ」
「拓也がちゃんと生きてここにいるっていう実感」
「なんだそれ」
 マサルの硬い手が頬から首筋へ、そして胸まで降りてくる。別に変な意図は持ってない。純粋に俺が生きてると確認するための行動だ。でもやっぱ恥ずかしくて、心臓は鳴りやまない。
 首筋にかかる長い髪がくすぐったくて身をよじる。
「心臓の音すごいな。緊張してんのか?」
「……っ」
 くすりと耳元で囁かれて肩が跳ねる。いったん体を離されて、今度は正面から抱き締められた。そのたくましい腕と胸に安堵を覚える。温かくて心地いい。
 見上げたマサルの顔は、ほんの少し赤い。そう指摘するとマサルは「るせー」と唇を重ねてきた。
「お前があまりにも可愛い反応するのがわるいんだ。この場で食べちまってもいいんだせ?」
 笑いながら冗談混じりに首筋を撫でられる。今度は明確に変な意図があるさわりかただ。
「っ! 外はいやだっ!」
「ほー? じゃあ部屋だったらいいんだな?」
 あ、墓穴掘った。ヤバいヤバい。マサルの奴目がマジだ。駄目だ戻ったら食われる。硬直する俺を担ぎ上げて、マサルは楽しそうに歩き始める。
「ちょっ! こんな真っ昼間から嫌だからな!」
「男に二言は認めねぇぞ」
 ちくしょう。これ詰んだな。
 でも本気で拒めない俺は、相当この男に溺れてるんだろうな。
 そんな俺らしくないことを考えてしまうあたり、俺は重症みたいだ。


ぬくもりは生の証
((あったかいな……))


歴代×拓也うまいです。私が書いた拓也が白いのも、珍しい。たぶん。
20120113

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