*擬人化注意 *切甘 *レベ一


 見た目は20歳前後と言っても、彼は俺よりもはるかに長い時の中を生きている。俺なんか比べられないくらい、辛い思いも悲しい想いもしてきたんだろうな。
俺よりも大きな手は肌こそ白くて綺麗だけど、触れてみると武器を握っているせいだからか皮膚が固くなってごつごつしていた。戦いや訓練で付いたんだろう小さな傷が指先に至るまで数えきれないほど刻まれている。それはもちろん手だけじゃなくて、彼の体中に刻まれていることを俺は知っていた。
 それを見て思うのは、俺はレーベの生きて来た時の中では本当にちっぽけな存在でしかないんだろうなということ。魂を合わせて戦っていたあの時ですら、レーベの長い生の中の刹那でしかない。俺は彼を知っているようで、思った以上に知らないんだ。
「輝一?」
 頭の上から戸惑ったような声が降ってきて、俺はやっと無意識の内にレーベの手を思いっきり握りしめていたことに気付いた。
 ごめんと手を離すと、レーベは苦笑して俺の頬を撫でる。
「何か思いつめているようだったけど、大丈夫か?」
 こつん、と額を合わせて不吉ささえ感じさせる紅の瞳が俺を覗き込んだ。紅玉のようなそれは曇りなく俺の顔を映し出している。
「なんでもないよ。ただ大きな手だなって」
 当たり障りなく答えると、訝しげな顔で「そうか」と言ってレーベの顔が離れた。また俺よりも高い位置へと目線が戻っていく。なんとなく勿体ないことをしたなと思った。どうせなら甘えてキスの一つでも貰えばよかったんだ。そうすればこの心のもやもやも少しは晴れたかもしれないのに。
 俺に触れるレーベの手には、どんな感覚が伝わっているのだろう?
 彼から見る俺は、どんな風に見えているんだろう?
「知りたいなぁ」
 レーベが見たこと、聞いたこと、触れたこと、感じたこと。全部知りたい。そう思っても、俺はレーベ自身じゃないから無理な話だとは分かっている。
好きな人の事を全部知りたいと思うのは当たり前。そうすればこの言いようのない彼との距離が少しでも縮まる気がして、不可能だとわかっているからこんなに苦しい。
 八つ当たりのようにレーベの胸へ飛び込むと、突然ふわりと抱き上げられて間抜けな声が出る。決して太い腕と言う訳ではないのに、何でこうも軽々と俺を抱き上げてしまうのか。不満の声はキスで封じられた。
「あんまり物欲しそうな顔をするな。俺が自制できなくなる」
 あれ? 俺そんな顔してたんだ? 別に自制なんていらないのに、と言ってもレーベは困ったように笑うだけ。いっその事もっと求めてくれた方が俺も楽になれるんだけどな。なんて思いながらするりとレーベの首に腕を回してキスを強請る。
 これだけでも俺に余裕なんてなくなってしまうのに、対するレーベの表情は優しい微笑みから一向に変化がないのがすごく悔しい。これが歳の差なんだろうなぁ。


本当は思った以上に距離なんてなく
(どうやったらレーベの理性とか粉々に砕けるのかな?)
(思いついても実行だけはしないでくれ、俺がもたないから)



ツイッターで仲良くしてくれるふすきちゃんへ、HappyBirthday!
この一年がふすきちゃんにとっていい年になりますように。 
なんとなく薄暗いお話になってしまってごめんね(・ω・`)
20120418

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -